オートクチュールラブ
- 「隣でお話しよ? ね?」
瞳を潤ませながら「お願い」と言うと、執事服の山田くんは困ったような顔をした。
「でも……」
「他のお客さん来るまででいいから、ね?」
「……それまでなら……」
結局流されてしまう素直な可愛い山田くんを隣に迎えて、ニコニコと笑う。
「窮屈じゃない?」
「少しね。こんな服着ることなんてないから」
「山田くんは蝶ネクタイなんだ。可愛い」
山田くんの首元に触れると、蝶ネクタイをいじる。スナップで留めるタイプだから取り外しは簡単そうだ。
「七五三みたいじゃないかな」
「そんなことないよ」
ゆるく首を振りながら、そのまま手を滑らせて胸のポケットチーフに触れた。
「これ、男の人がよくつけてるけどなんのためなんだろうね」
「そう言われてみれば……僕も初めて身につけたから分からないや」
「だよねえ」
けらけら笑っていると、山田くんが「え?」と困惑したような声を出した。
「ん?」
私は胸ポケットから腕を伝って、手袋に指を滑らせていた。手袋の内側に指先を滑り込ませてすりすりと手のひらを撫でていると、山田くんが顔を赤くした。可愛い。
「自分は大丈夫、って思ってた?」
手袋に指を抜き差ししながら、耳元で囁く。
「気をつけなきゃダメだよ。山田くんが一番……」
ふと山田くんの顔に目をとめると、瞳を潤ませてじっと私を見ていた。ぞわっと背筋が震える。
「そんな期待した顔して……」
山田くんの頬に手を添えて私は顔を寄せた。
「でもここじゃダメ。他の人来ちゃうかもだし」
「あっ……」
パッと離れると、名残惜しそうにする山田くんに囁いた。
「終わったら、今度は自分から、来れるかな」
「っ……」
小さく頷く山田くんに微笑む。やっぱり山田くんが一番可愛い。
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