星に誓いを
- 「よォ」
団地内の公園……とも呼べないような遊具が少しだけある広場のベンチで、風呂上がりに落ち合う。それが俺たちの日課だった。
「明日試合なのにいけないんだ」
「今日だけやらねェ方が気持ちわりーんだよ」
つかお前も来てんだろ、と言うとなまえはくしゃっと笑った。なまえが消毒液や絆創膏を取り出す。あまりにも生傷が絶えない俺を見兼ねたなまえにこうやって手当をされるのがいつの間にか日課になった。なまえは俺が喧嘩に明け暮れていた時には死にそうな顔で俺を見ているだけだったが、俺が野球を再開したと聞いてからはこっちの居心地が悪くなるほど嬉しそうで、だからべつにこんな手当に本当は意味はなかったけど、俺も無下にはできなかった。そうこうしているうちにそれが日課になって、手当を受ける時間もその間にする会話も、いつの間にか俺の中では大事なものになっていた。
「いよいよ明日だねぇ」
消毒液を染み込ませたガーゼでなまえが俺の擦り傷をポンポンと叩く。消毒するほどの怪我でもないし、風呂に入って傷口は綺麗だったが、俺はそれを受け入れる。
「応援行くからね!」
来んなよと言いたかったが、言える立場ではないのでグッと押し込めた。実際、俺の活躍を見せられるのは悪い気分ではないし。
「……熱中症対策しとけよ」
「うん!」
嬉しそうに消毒が終わった俺の手を取ったなまえは、小せェ手にぎゅっと力を込めた。
「あのね、葵くん。明日はみんな味方だよ」
祈るように、俺の手を握ったなまえがそう言う。
「私も、チームのみんなも。でも一番は」
すっと瞼が開いて、なまえの真っ直ぐな視線に射抜かれる。
「この傷たちだよ。悔しくて流した涙が、擦り傷だらけの体が、明日球場に一人で立つ葵くんの一番の味方になってくれる。みんなみんな味方だよ」
なまえの微笑みが街灯の薄暗い明かりに照らされる。綺麗だな、と思った。
「今日まで私に手当させてくれてありがとう」
葵くんは優しいなどとぬかすなまえに、「まるで今日で終わりみてェな言いぶりだな」とわざと暴投する。
「これからもお前がすんだろ、手当」
「葵くんが許してくれるなら、もちろん!」
明るく笑うなまえに、俺は不敵に笑った。
「俺を誰だと思ってんだ。藤堂葵様だ。明日は俺の活躍しっかり見とけよコノヤロー」
明日は大事な試合で、いつもと打順も違って、それでも今夜は眠れそうだと思った。
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