カレの心を鷲掴み♡えちカワオープンタイプセットアップ
- 私の服を脱がせたシンが、瞬間的に心ここに在らずという顔をした。最近、シンはたまにこうして何かを考え込むことがある。
「……シン?」
そう声をかけると、「どうした?」と誰もが恐れる暗点のボスのものとは思えないほど優しい声が返ってくる。さっきまでのどこかぼんやりとした表情はすっかりなりを潜めていた。どうしたのと聞きたいのはこっちだ。今日こそはその原因を突き止めてやる、とシンの動きを制止しようとした言葉はシンによって食べられてしまった。
「んっ……む、」
いつも結局、こうしているうちにあれよあれよとシンに翻弄され、何がシンの顔を曇らせるのか、その理由を突き止められずに流されてしまう。そして、すべてが終わるころには精も根も尽き果て、その疑問ごと忘れてしまうのだ。
「シンッ……まって……」
「なぜだ? ここは良くないか?」
手を替え品を替え私を攻めるシンのせいで、私の口からは嬌声しかこぼれてこない。
「っ……もう、少し手を止めて!」
「はいはい、女王様」
シンの薄い頬の皮を摘むと、肩を竦めたシンが両手を上げた。
「……何を考えてたの?」
「子猫をねじ伏せることを」
「さっき! ……私の服を脱がせたあたりで、なにか考えてたでしょ!」
怪訝そうな顔で数秒黙り込んだシンは、「ああ」と得心したような声を漏らした。
「最近、たまにそうやって何か考え込むよね? 何か気になることでもあるの?」
「素晴らしい洞察力だな。ハンターをやめて探偵業でも始めたらどうだ?」
からかう姿勢を崩さないシンの目をじっと見つめると、シンは諦めたように小さく笑い、それから首を傾げてこめかみをトントンと指先で叩いた。
「……カレのハートを鷲掴み、えちカワオープンタイプセットアップ」
シンの口から出てきた、シンには全く似合わないバカみたいな単語に呆けていたが、聞き覚えのあるその単語をどこで耳にしたのだったかと記憶を手繰り寄せるうちに、私は真っ赤になって枕を引っ掴んだ。
「〜〜シンッ! また見てたんだね!」
そのまま枕をシンの顔に向かって投げつける。先程まで睦みあっていた雰囲気も台無しの行為だったが、シンは甘んじて柔らかい枕を顔面で受け止めた。枕を手に取って楽しそうに笑っているシンを睨む。
「可愛い恋人が俺のために選んだ下着をいつ見せてくれるのかと思い悩んでいただけだ。一向に身につける気配がないから、まさか俺以外のために選んだのかと心が痛んできたところだぜ」
「カレのハートを鷲掴み、えちカワオープンタイプセットアップ」は、数ヶ月前にモモコとショッピングをしていたときに付き合いで入った、普段は行かない少しセクシーな路線のランジェリーショップでその場の雰囲気や店員さんに乗せられてまんまと購入してしまったものだ。きっとその様子を見ていたカラスがどこかにいたのだろう。
大袈裟に首を振って痛んでいるらしい胸を手で押さえるシンに、「あなた、布きれにそんなに興味があったの?」と唇を尖らせる。
件の下着は自室で一度だけ試着してみたが、日常使いできるデザインではなかったし普通に恥ずかしすぎたし、そもそもシンは下着ごときで一喜一憂する人でもないだろうと思ってクローゼットにしまいこんだまま忘れていた。
「確かにお前が身につけるものならなんでもいいが……たまにはいつもと違うお前も見てみたいと思うのは当然のことだろう?」
くすぐるように私の頬を撫でたシンに、俯いて自分の体を見下ろした。シンと過ごすのは、仕事終わりのことが多い。活動時間の違う私たちにとって最も都合がいいのは、休みの前夜に一緒に夜ふかし(シンにとっては昼間だが)をすることだからだ。
だから、だいたい私の下着は色気の欠片もないスポーツタイプのブラジャーに、下着の線がボトムスに響かないシームレスの真っ黒なショーツだった。確かにシンは下着一つで浮かれたりはしないだろうが、さすがにこれはこれで色気がなさすぎたかもと反省した私は「今度、機会があったら着るよ」と歯切れ悪く言い訳をした。
「そうか……」
シンがいつの間にか手のひらに纏わせた赤黒い霧を使って何かを引き寄せる。
シンの手に現れた、普段使いすることを前提に作られていない下着を見て私は体を固まらせた。
「奇遇なことに、その『機会』ってのがやってきたんじゃないか?」
余裕綽々に笑うシンを見て、最初から……つまり、私に分かるようにわざと顔を曇らせて私から切り出すように仕向けていた時から……シンの手のひらの上だったのだと悟り、私はもう一度枕を掴んだ。
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