かっこつけて、酔って、抱いて
- 深夜、突然のインターホンにまあまあビビりながらも、画面に映る恋人の姿に嘆息する。扉を開けると、お酒の匂いをぷんぷんさせて頬を赤らめた諏訪さんが立っていた。諏訪さんは上から下まで私の姿を見ると、「かわいい」と呟いた。
今日は諏訪さんとお泊まりの時のような可愛いパジャマじゃないし、着圧ソックスも履いているし、よれよれダボダボの上着を着ているから、可愛いわけはない。酔うと口が上手くなるのかと思いながら私は諏訪さんを部屋に招き入れた。
「ベッドまでは歩いてくださいよ」
よたよたと廊下を進む諏訪さんの背中に手を添えながらそう言うと、「ベッド」という単語に反応した諏訪さんがニヤニヤ笑った。
「何するつもりだよすけべ」
「すけべは諏訪さんです」
ベッドに座らせ、キッチンから水を持ってきて飲ませると、すぐに諏訪さんをベッドに寝かせた。
「ほら早く寝てください。ベロベロじゃないですか」
諏訪さんは私の腕を掴むと、拗ねたように「シたくねーの」と呟いた。勝手な言い草に少し腹が立ったから、諏訪さんの腕を逆に掴んで、シーツに押し付けた。諏訪さんに覆い被さって見下ろすのは、なかなか悪くない。
「……シたいからですよ」
おあずけは嫌なので、と言い添えて、諏訪さんの唇を指でなぞった。
「だから、覚えてたら明日の夜、ちゃんと襲いに来てくださいね」
ぽかんと私を見上げる諏訪さんに、「分かりましたか?」と確認すると答えが返ってきたので、諏訪さんの上から退く。
「じゃあ、おやすみさい。電気消しますね」
私は諏訪さんにベッドを譲り、部屋を暗くした。
▽
翌朝、起きてすぐに迷惑をかけたことを謝り倒して、寛大な彼女にお茶漬けを振る舞われてから部屋を後にした。扉の前で我慢していた息を吐くと、ドッと心臓が動き出した。何度も夢じゃねーよなと自問しつつ、赤くなっているであろう顔を掌で覆った。
その日の夜、俺は恋人の部屋の前に立っていた。コンビニ菓子の入った袋をぶら下げて、もしも昨夜のことが俺の見た都合のいい夢だったら、これで「昨日の礼」という言い訳をしようと企んで。インターホンを鳴らすと、出てきたなまえは昨夜とは違い、いつも泊まりの時に着ている寝巻きを着ていた。
「……覚えてたんですね」
微笑んだなまえにくらりと目眩を感じながら、ごくりと唾を飲み込んで俺は後ろ手に扉を閉めた。
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