好きなところ



「すごいことになっちゃいましたねえ」
セリフとは裏腹にのんびりとした声音でそう言うと、なまえは壁にかかっている文字を再度見つめた。そこには「お互いに相手が自分のどこを好きだと思っているかを10個当てないと出られません」と書かれていた。
「面白い部屋〜」
「何も面白くない」
対照的に不愉快そうな二宮は、「さっさと出るぞ」と吐き捨てた。
「……顔、声、体」
少し考え込んだあと二宮がそう言うと、ピンポーンという間抜けな音が三回連続で鳴り響く。
「こういう仕様なんですねえ」
それにしても、やっぱり大した自信だ、と思ってなまえが二宮の言葉を待っていると、それ以降二宮は黙り込んでしまった。
「……ええ!?それだけですか!?もっといっぱいありますよ!!よく考えてください!!」
なんでそんな表面的なところしか挙げられないのか、となまえが抗議すると、「ならおまえがやってみろ」と言い返される。
「ええと……」
とりあえず数打ちゃ当たる戦法だ、となまえは二宮の真似をして「顔、声、体……」と指折り数えていく。するとまたもや正解を意味する音が鳴り響いた。
「えっ、そうなんですか?」
なまえが嬉々として二宮に詰め寄ると、二宮はしーんと反応を返さずに無視をした。
「も〜〜」
思わぬラッキーだと思いつつ、改めてなまえは二宮くんが私のどこが好きか……と考える。
「…………ぜ、全然分かんない……」
愕然とすれば、二宮はほら見ろと呆れたようになまえを見た。
「本当に10個もあります!?」
「あるに決まってるだろう」
「決まってるんだ……」
そう呟くと頭を鷲掴みにされたので、「嘘です嘘です」と慌てて撤回した。
「分からなくてもとりあえず適当に言っていきましょう!じゃなきゃ一生出られないです!」
なまえはそう提案し、交互に一つずつ好かれていると思うところを言い合っていくことにした。
「えーと、バカなところ?」
ピンポーン
鳴り響いたSEに生温かい目で二宮を見ると、「なぜ真っ先にそれが出てくる?」と詰られた。
「……自信があるところ」
二宮がそう言うと、不思議な不協和音が鳴り響く。
「なんだ今の音は」
「半分正解って感じじゃないですか?自信があるところは好きですけど傲慢なところは嫌いなので!」
なまえがばっさりそう言うと、二宮は小さく眉を寄せた。
「うーん、明るい?」
ピンポーン
「射手としての実力」
ブブー
「すぐ笑うとこ!」
ピンポーン
「才能」
ブブー
そんなことを繰り返していると、なまえの方はすぐに条件を満たすことができた。
「二宮くんって、私の全部が好きなんですねえ」
しみじみとそう言うと、「おまえこそ本当に10あるんだろうな」と睨まれた。
「もーへそ曲げないでください。もっと考えて。いっぱいありますよ」
なまえが二宮を宥めると、二宮は少し考えて「冷静なところ」と言った。またもや不正解の音が鳴り響き、ついフフ、と笑ってしまうと二宮に睨まれた。
その後は自棄になった二宮が自分の体のパーツを列挙していくことで条件を満たすというパワープレイを行い、二人は部屋から出ることができた。
「おまえは本当に俺のことが好きなのか?」
そう零す二宮に、なまえは笑って「拗ねないでくださいよ」と言った。
「家に帰ったら二宮くんの好きなところ全部教えてあげますから、機嫌直して」
二宮の背中をポンポンと撫でると、「拗ねてない」と不機嫌そうな声が返ってきた。



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