このあと校門の手前で捕まる



「荒船おはよ〜」
登校中に荒船の背中を見つけ、声をかける。荒船は返事もせずに私の顔をじっと見つめた。
「え、何?」
整った顔に見つめられ、内心ドキドキしていると、予想外のことを言われた。
「……映画、行ったのか」
「?うん、よく知ってるね」
しかし考えてみれば簡単なことで、昨日SNSに映画に行った投稿をしたので、きっと荒船はそれを見たのだろう。それがどうしたのかと思って荒船を見つめ返せば、「……誰と行ったんだ?」と再び聞かれた。
「一人だけど……」
「嘘をつくな」
荒船は私の腕を握った。そのあまりの力強さに、顔をしかめてしまう。
「嘘って何?嘘なんてついてないよ」
「……おまえ、いつもホラー観る時は怖いからって俺に付き合わせるだろ」
怖い顔の荒船に、再び「誰と行った?」と問いつめられて、私は惚けた。確かに昨日観たのはホラーだった。そして、荒船が何を言いたいのかも分かった。
「……っはあああ!?ほんとはホラーなんて怖くないし!あんなのただの口実だし!!荒船がそんなに鈍いとは思ってなかった!!」
叫んだ私に驚いた荒船の手が緩み、その隙に私は荒船の手を振りほどいて走った。
「察しろばーか!!」
小学生みたいな捨て台詞を吐いて逃げてしまう。これでさすがの荒船も私の気持ちに気づいただろう。私の心臓はバクバクと大きな音をたて、顔は熱くなった。本当はもっと色々考えていたのに、荒船のせいでこんな伝え方になってしまった。私はもう一度「ばかー!!」と叫ぶと、学校までの道のりを全力で走った。



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