オアシスを見た

ぐつぐつと鍋の中のものが煮えてきた。宇宙空間では調理できるものも限られてくるが、地上では勿論そんな制限などどこにもない。新鮮な食材を使って調理出来るのはやはり嬉しいものだ。だがそれよりも一緒に食事をしてくれる人がいることが何よりも幸せなことなのだけれど。

それにしても、だ。マイスターが地上で任務するためノエルも共に地球に降下し、現地で与えられた部屋でアレルヤの帰りを待ちつつ調理を進めていたのだが。コンロの火を止めて、ノエルは肩越しに振り返る。少し前に帰宅してからずっとノエルの首に抱きついた状態でいるアレルヤは、晴れやかしいまでの笑顔を浮かべてリラックスしている。ノエルの首に顔をうずめるようにしてその感触を楽しんでいるようなのだが、正直にノエルとっては邪魔以外のなんでもない。

「アレルヤ」
「何?」
「ちょっと重いんだけど」
「ノエルが軽すぎるんだよ。」

会話のキャッチボールが成り立っていない。ノエルが動くたびにアレルヤも離れることなくずるずると引きずられるように移動する。それは大の大人の姿だとは思えない。それを指摘しても、充電中・と然も当たり前のように離れてくれない。充電中って何よ充電中って…とノエルが呆れて溜息を吐けば、アレルヤは「何か悩み事?」と心配そうに顔を覗き込んでくる。その悩みの種はまさに今のこの状態なのだが、そんなことを言ってしまえばきっと彼は泣きそうになるので言わない。

「後五分だけこうしてていい?」
「それ、十分前にも言ってたよ、アレルヤ」

そうだっけ?と首を傾げるアレルヤに、ご飯が出来るまでだからね・とひとつ笑って調理に集中する。離れていた分、その体温がひどく愛しく思える。肩にかかるその重さが心地よい。こんなことを素直に彼に言ってしまえば、調子に乗ってしまうので言わないけども。でも、今日くらいなら良いかな?と思ってしまう私は、やっぱりアレルヤのことが大好きなのだと認めざるを得ないのだった。


END
(20080918)

「ところでさ、ノエル。何作ってくれてるの?」
「ダブリン・コドル。もう出来上がるから食器出してくれない?」
「まだ離れたくない」



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