「私は、貴方が幸せならそれでいい・なんて思えない」
話があるとアレルヤに呼び出されて、久しぶりにふたりきりになる。今までにないくらい気まずい空気が流れる。それは全てを予見させた。なんとなく悟っていた。アレルヤが帰ってきて、あの子のはなしを聞いて、アレルヤがあの子を連れて帰って来たときから。
不安はあった。繋ぎとめようと思えば出来た。けれど、どこか驕っていた。
アレルヤは私から離れたりしない。
そんなの、確信でもなんでもなくてただの願望だった。重い空気の中、ノエルがただの一言それを吐き出す。アレルヤは、小さく頷いた。
「だから貴方とあの子の幸せを祈れない。いつか後悔すればいいって思ってる」
またアレルヤは頷いた。全てを飲み込むように、全てを受け入れるように。アレルヤは何も言えない。だから、彼の心をあえて抉るような言葉を選んで刺していく。ああ、なんて私は嫌な女。こんなに心が捻じ曲がっていたなんて知らなかった。けれど、止まらない。
「それに貴方の心には、もう私はいないでしょう?」
「、そんなことは」
「いない、いないよ。もうずっと前から、アレルヤの中に私はいない」
驚いたように顔を上げた彼に首を振る。アレルヤは優しい。私を傷つけないような言葉を選んで決意を告げようとしている。アレルヤは優しい人。そんなこと、ずっと前から知っている。きっとあの子よりずっと知っている。その優しさを私は貰って生きてきた。あたたかい陽だまりみたいなそれは、今の私にとって残酷なだけだ。同情はいらない。その優しさを向ける相手は私じゃない。一番じゃないと嫌だ。彼の一番じゃないと。
ああ、いつの間に私はこんなにも彼に依存していたのだろう。いつの間に彼をこんなに愛していたのだろう。それが普通だと思えるくらい、貴方は私の一部だった。けれど、貴方はもうそうじゃない。
もう、私は貴方の一番にはなれませんか?
「さよなら、アレルヤ」
泣いて縋ればよかったのか。そうした方が優しい彼は揺れて別れを切り出せなかっただろう。そう、したかった。どんな形でもいい。彼を私に繋ぎとめておきたかった。アレルヤを繋ぎとめておくのなら、子どもだって産んでも良かった。
でも、喉から零れたのは反対の言葉。
そうだ、私は嘘吐きなんだ。幸せを願えないと、後悔すればいいと言っても、本当は逆のことを心の底では願ってる。この人が幸せになればいいと、きっと思ってる。
けれど、そう思いたくないんだ。一緒に幸せになりたかった。一緒に生きたかった。
さよならなんて、言いたくなかった。
END
(20081117 song by regret / 星村麻衣)