「ノエル、まだ買うの?」
「うん」
久々に与えられた、ふたり揃っての休暇。いつも休みとはいえいつ敵襲があるか分からないので部屋でゆっくり過ごすことが多かったが、今回は大丈夫そうとのことで地上への降下が許された。いつもなら地球に降りた最初の一日ゆっくり過ごすのだが、今回は少し違う。降下してすぐにノエルの要望でモールにて買い物。そんなに焦らなくとも休暇は三日も与えられているのだから明日でもいいのに・と思わなくもない。まあ他のクルーたちの買い物も引き受けたのでそれを全て買うとなったら時間はかかるかもしれないけれど…もしかしてノエルは一日で全て買うつもりなの?というか今まで買ったものは全てノエルのものな気がするんだけど。
「はいアレルヤ。これも持ってね」
ショップから出てきたノエルの手には購入した服の入った袋が。当然のようにアレルヤもそれを受け取るが、既にそのやり取りを何回交わしたことか。彼女の荷物を持つことは慣れているし当然のことだと思っているが、ちょっと両手で持つのもキツくなってきた。それでも彼女はまた軽やかな足取りで歩き出す。あ、目が別の店に。やばい、もう持てない。
「あのさ、ノエル。一回この荷物をホテルに置いてからまた来ない?そろそろ頼まれたものも買わないと」
「頼まれてる分は明日。また買いに来るの」
くるっと振り向いて彼女はさも当然のように言う。え?ホテルに帰るつもりないの?じゃあこの荷物、ずっと僕が持ってなきゃ行けないの?!
動揺した瞬間微妙なバランスで抱えていた紙袋を落としかけた。「危なっ!」と思わず声が洩れる。何とかバランスを取り直してこの危機的状況をノエルに目だけで訴えるが、彼女はにこっと笑ったまま。…ノエルさん?ちょっと恐いんだけど。僕、何かしたっけ?
「まだ持てそうだね、アレルヤ」
「え?!もうそろそろ無理があると思うんだけど」
「大丈夫だよ。アレルヤ力持ちだし器用だから」
「じゃ、じゃあせめてこれをロッカーに預けさせて!そしたらまだ僕も買い物に付き合えるから!」
いつもなら荷物持ちをさせることにも躊躇うノエルなのに、今日はどうしたことか。まるでスメラギさんみたいに強引。それでも彼女に対して苛々とした感情は全く湧かないし、珍しくて可愛いなぁなんて思ってしまう自分がいる。甘いなと自覚はしているし直すつもりはさらさらないけど。
アレルヤの必死な説得に、ノエルは「わかった」と頷く。近くのロッカーに小分けして荷物を預け、彼は肩の荷が下りたように安堵の溜息を吐く。そして久しぶりに自由になった左手でノエルの手を取る。
「荷物持ちは歓迎だけど、やっぱり手を繋げないのは寂しいな」
苦笑して言えば、ノエルは少し驚いたように目を瞠る。だがすぐにそれを綻ばせた。そうだね・と彼女もまた頷く。
「でもまた荷物増えちゃうよ?」
「そしたらまた預けにこればいい」
まだ買うでしょ?と茶化すように尋ねてみれば、ノエルは大きく頷いた。女の子の買い物に付き合うのは大変。でも、荷物持ちの合間にこうやって彼女と手を繋いだり言葉を交わしたり寄り添ったり出来るのだから、これくらいなんともない。
END
(20081118)