窓から見える宇宙で、星に混ざって何かが爆発して光って消える。それはひとつだけではなく、いくつもいくつも。あれはMSが爆発している光で、その光が生まれた瞬間誰かの命が散っていることも知っていた。そして今自分が乗っているトレミーもまた、モニターや機器から火花が飛び散り、爆破するのも時間の問題というところまで損傷をうけていた。
周辺で小規模な爆発が起こり、煙がひどく立ち込めている。船首とはもう通信が繋がらない。かろうじてこの場もまだ保たれているといった状態だろう。きっと、後数分もしないうちにトレミーは爆発する。それはつまり、自分自身の死を意味していた。
「もう私しか残ってない、か」
ひとつ息を吐き出して、まっすぐ前を見据えた。まだ無事な部屋を渡り歩いて、ひとつずつ開けっ放しになっているそれをロックしていく。気休めでしかないが、主がいなくなった部屋の前で一礼する。今まで私達を守ってくれてありがとう。扉一枚越しに、クルーそれぞれの思い出が詰まっている。ここで、誰かと笑って、泣いて、愛し合った。いなくなってしまった皆は、きっとここに戻ってくる。
「お疲れ様でした」
扉を全て閉め終わって、最期の場所にやってきた。何度も何度も、あの人と一緒に空を眺めた、展望デッキ。ガラスに触れて、目の前で爆破した光に手を伸ばす。
「…アレルヤ」
彼は、今この宇宙のどこかで戦っているのだろうか。そうであってほしい。まだ、この世界にいてほしい。一秒でも長く、私よりもこの世界にいてほしい。
まだいるよね?
今散っていった光は、貴方のものではないよね?
後方から今までで一番大きな爆発音が響いた。今の音のせいか、ひどい耳鳴りがはじまった。それと同時に周囲の音が聞こえなくなった。もう、時間が迫っていた。
「…先に、逝ってます」
出来ることなら追いかけてきてほしくないけれど。それでも、貴方はきっとすぐ後を追ってくるのでしょう。申し訳なさそうな、ひどく泣きそうな顔をして。いつまで経っても子どものような人ね。分かってます、貴方だから私は貴方を愛して今まで生きてこれたのです。
「アレルヤ」
炎による熱が身体を覆う。不思議と熱さは感じなかった。もしかするとこの熱は爆発によって発生した熱風で、もう私の身体はなくなってしまっているのかもしれない。
それでも、まだ私は貴方を想っている。願っている。貴方の命が私よりも続くことを、誰よりも祈っている。
だからどうか、哀しまないで。
私の死が、貴方に優しく伝わりますように。
貴方が泣かずにすみますように。
私はただ、祈っています。
・・・
「ノエル…?」
遠くで一段と大きな光が生まれた。それは何か大きな船が爆発したことを示していて。…あの方向には、トレミーがいるのではなかったか?先ほどからトレミーと全く連絡が取れないのはどうして?どうして、ノエルが生きてる気がしないんだろう。
「…ノエル」
彼女の名を呼ぶ。愛しい宝物のような、その名前。どこでその名前を呼んでも、彼女が笑っている姿を思い浮かべることが出来た。なのに、今は出来ない。
その理由を、今はまだ知りたくなかった。
END
(20090312)