同じだけど、同じじゃない。言葉で説明できないけれど、何かが違う。
ニールを頼むな・と、はじめて二人だけの約束をした。そして送り出されて五年目の春。どん底だった私を救ったのはやはりあの人だった。頼むといわれていたのに、守りきれなかった。むしろ守られてばかりだった。あの日以来、ずっと後悔が身体中を毒のように蝕み、追い討ちをかけるようにアレルヤまでいなくなった。何も見えなかった私の前に現れたあの人は、五年前と変わらない、困ったような笑みを浮かべて私の頭を撫でたのだ。変わらない体温。変わらない感触。変わらない優しさ。
「ごめんな、お前ひとりに任せてばっかりで」
「なんでライル兄が謝るの?約束守れなかったのは私なのに」
ニールを頼むと、ひとり残されることになったライルはノエルにそう言ったのだ。俺は一緒に行けないから、お前があいつを守ってくれと。勿論ライルだってノエルがニールを守ることができるなんてこと期待していなかっただろう。故郷でのテロ以来この双子がノエルを守って生きてきたのだ。今更立場が逆になることはないし、ニールもライルもずっと年下の少女に守ってもらおうなんて思ってもいない。けれど、どうかギリギリで生きるあいつを救ってくれ・と。一言でいいのだ、無茶をしないように見張っててくれと。そう、ライルはノエルに頼んだのだ。そして、約束した。絶対に、また三人で会おうと。三人でアイルランドに帰ろうと。
けれど、約束は守れなかった。
「泣くなよ。ニールに怒られる」
「…だって、ライル兄もニール兄も、私が悪いのに自分が悪いって言い張るんだもの…!」
「そりゃ悪い。これが俺らの性格だからな。許してくれ」
許してくれなんて、とノエルは首を横に振る。なんで彼が謝らなくてはならないの。悪いのは私なのに。そう思っても口には出せない。嗚咽が言葉を遮って邪魔をする。するとライルはノエルの頭を再び優しく撫でる。「なんでお姫様はそんなに泣いてるんだ?」と、優しく穏やかな口調で問うてくる。彼の前では、嘘をつけない。
「…アレルヤが帰ってこないの。生きてるのか、死んでるのかさえ分からないの」
「アレルヤ?なんだお前、男が出来たのか。兄ちゃんが認めた奴じゃないとだめだぞ」
こんなときにふざけて!とノエルは軽くライルの胸を叩く。けれど腕に力が入らない。それを悟ったのかライルは弱々しく宙に投げ出されたノエルの腕を掴む。そして、そのまま彼女の身体を引き寄せた。小さい頃は何度も何度も抱きしめてくれていた。それはスキンシップや挨拶や、仲の良いもの同士がする類のもの。そしてそれは今も変わっていない。
「ニールが許したんなら良い男なんだろ?分かったよ、俺がちゃんと見つけてくるから」
俺は絶対約束を破らないから。
そう、穏やかに呟いた彼の声が胸の奥に響いて落ちた。
END
(20081003)