できそこないの主

「熱烈な歓迎だな」

そんな飄々とした声が曲がり角の奥から聞こえてきた。帰還した刹那とスメラギの出迎えに遅れてそこへ向かう。なんとなく、嫌な予感はしていた。あの声を自分が聞き間違えるはずないし、ニールがもういないのならここに来るのはひとりしかいなかった。
案の定、角を曲がってみれば困惑した表情を浮かべた仲間たちがいて、彼らの視線は真っ直ぐとただ一人の青年に向けられていた。
ヒッ、と喉の奥で小さく音が鳴った。

「ノエル」

一定の距離を保ったまま動けずにいたノエルに気づいたライルは、無重力の中を泳ぐようにノエルの方へと歩み寄った。

「久しぶりだな、何年ぶりだ?」

そう笑顔を向けてくる彼に、ノエルは同じものを返すことが出来ない。どうして、と何故この人がここにいるかを問いただしたいが、声がうまく出てこない。
仲間たちはノエルがニールと幼馴染であり兄妹のような存在であったことを知っている。だから、ニールの弟であるライルとノエルが顔見知りであることを不思議にすら思わない、むしろ感動の再会とでも思っているかのよう。

でも、違うのだ。この人は、本当のこの人は。

ライルの肩越しに誰かに視線を向けて助けを求めるが、誰もその信号に気づいてくれない。アレルヤ。アレルヤがここにいたら、と思うが、思うだけ無駄だ。だってアレルヤはいない。

「懐かしいな、またお前に会えるなんて」

そう笑顔を向けるライル。ノエルの頭を撫でて自分の方に引き寄せる。動けないノエルはただなされるがまま。そしてライルがノエルの耳元へと口を近づける。小さく、誰にも聞かれないように呟かれた声。

「聞きたいことがたくさんあるんだ、ノエル」

それは、闇への案内状。

「兄さん、死んだって?」

笑顔で聞かれたその質問に、決して答えてはならない気がした。



END
(20081012)


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