「君みたいな若い女の人もこんなところにいるんだね」
どこか遠くを見るように私を見たのは、ティエリアと一緒に帰って来た刹那が連れてきた青年だった。詳しくは聞いていないけれど、刹那の知人だという。その割には彼自身もこの場を警戒していたし、ここに来て即営倉入りというのも少し疑問に思っていた。けれど、その侮蔑も含んだ物言いに何となく彼の現状を理解した。持って来た食事のトレイを彼の前に置いて、「もっと若い頃からここにいます」と返す。
刹那のように五年前から?と自嘲めいた口調で問われ、それより前からですね・と淡々と答えた。
「君も、武力介入してたんだ」
力なく言われ、ノエルは怪訝そうに首を傾げる。CBの一員としてずっとここで生きている。だから、直接ガンダムに乗って武力介入したわけではないが補助的な意味では介入してきたといっても嘘じゃあない。そう思って否定をしなければ、青年はそれを肯定と取ったのだろう。ひどく疲弊したような表情で、ノエルを見上げた。
「僕の大切な人たちは、君たちのせいでいなくなったんだ。」
息が、詰まった。なんとなく事情を察する。この青年はきっと刹那がガンダムマイスターだと知らないで出会ったのだ。そして、知ってしまった。同情しそうになった心に「返せ」という声が突き刺さる。
「ルイスと、姉さんを返せ」
瞬間、彼に傾きかけていた心がぷつりと切れた。返せ?
「じゃあ、貴方も返してくれるの?」
冷えたようなノエルの声に、沙慈が瞠目する。
お父さんとお母さん。あの人たちの家族。みんなこの世界が奪っていったんだ。
「貴方だけじゃないのよ。誰かを返して欲しいのは」
怒りに任せて嘆き叫ぶことはいつだって出来た。けれど、私はそれをしなかった。したくなかった。それが今になってこみ上げる。止められない。返せ、返せ。ニール兄を、返して。アレルヤを、返して。
「私の大切な人はあの戦いでいなくなった。好きな人は、帰って来ない」
哀しいのは自分だけ。彼もそう思っているわけじゃあないって分かっている。だけど、無理だ。何もしていなかったくせに。私は、私達は戦っていたのに。
返してほしい。ひとりは嫌だ。早く、早く。
でも、呼んでもずっと無理だった。呼んでも無理なんだと、思い知らされる。
そう、絶望して爆発する。それを自分の中で何度も何度も繰り返していた。その姿が、目の前で力なく座り込む青年と重なった。そっか、この人は(私と同じ、なんだ)。
END
(20081008)