愛しき病



夜、寝る直前にいつもどちらが電気を消しに行くかで喧嘩になる。些細なことだけれど、温かい毛布にくるまれた身体をわざわざ起こしてそこから出るのはすごく躊躇われるのだ。そして睡魔に襲われたとき、人間は誰かに甘えたくなる。

「アレルヤ、電気消して」
「昨日は僕が消したよ。今日はノエルの番」

仕事で疲れているのか、アレルヤはノエルに背を向けたまま言うだけ。その声は本当に眠そうだしいつもの穏やかさもどこか間伸びしている。それでも今日先にベッドに入ったのはノエルの方。アレルヤが部屋に来たときに消したらよかったのだ。寝るだけだったら電気はもう必要ないのに!そう思わずにはいられない。
この部屋に住んで2年は経っているし、少しくらい暗くたってベッドまではたどり着ける。もう、アレルヤの怠慢じゃない!と、日中ならこんなくだらないことに腹を立てることもないのに、大きな背中に向かって舌を突き出した。仕方がない、いい加減自分も眠いし今日は大人しく消しに行こう。でかかった溜息を飲み込んで、ノエルは近くにあったガウンを羽織る。夜は冷える。せっかく温まっていた身体が一気に冷えた。

「寒…」

身体を震わせて足早にドアの近くにある電気のスイッチをオフにする。途端暗くなる寝室。五感と記憶を頼りにベッドに戻って再びそこに潜り込む。冷たいフローリングの上を素足で歩いたため足はすっかり冷えてしまった。あたたかさを取り戻すまでは時間がかかりそうだ。ベッドに潜り込めばすぐ隣でアレルヤが既に寝息を立てている。なんで今日に限って背中を向けて寝るんだろう。なんか、悔しい。というか、おやすみ・だってまだ言ってない。

「アレルヤ」

返事はない。ノエルはそのまま冷えた足をアレルヤの足にぴたりと密着させた。瞬間「つめたっ!」とアレルヤが声を上げる。いい気味!

「何するのノエル!」
「仕返し。おやすみアレルヤ」

反射的に飛び起きてやっとこっちを向いたアレルヤにおやすみのキスをして、今度こそベッドに潜り込む。「はぁ?」とわけが分からないというような表情をしているアレルヤにニコリと笑いかけて、毛布を手繰り寄せた。もう足はあたたまった。再び押し寄せてくる睡魔に今度こそ身を任せ、そのまま目を閉じた。明日はアレルヤに仕返しされるかも。


END
(20081106)





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