秒針が止まるまで



「ママ、わたし、サンタさんにみえる?」
「うん。とっても似合ってる」

嬉しそうに鏡の前ではしゃぐマリアは、ノエルの言葉に満足そうに笑った。サンタさんのかっこうがしたい!と言い出したマリアに、早速アレルヤがサンタの衣装を買ってきたのがはじまり。女の子なのでスカートだが、可愛らしいファー付きの赤いクリスマス仕様の衣装はちゃんとサンタを連想させる。ボンボンのついた帽子を被って楽しそうに笑うマリアと、同じようにサンタの衣装を着たルカ。ルカはマリアのような反応はないが、大人しくそれを着ているので嫌なわけじゃないようだ。

「パパ、マリアとルカ、かわいい?」
「可愛い!とっても可愛いよ!」

ノエルの後ろでふたりの姿を見ていたアレルヤは、マリアにそう聞かれて即座に声を弾ませて答える。頬が緩みっぱなしだ。可愛い可愛い、とマリアとルカの頭を何度も撫でる。このくらいの子どもは成長が早い。きっとこの服も来年には着れないんだろうなぁと思うと少し残念だが、逆にそれは成長の証でもあるので喜ぶべきことなのかもしれない。それをアレルヤに言ってみれば、「また来年も買ったらいいだろう?」とのこと。彼の子煩悩振りはさすがというかなんというか。
そんな言葉を交わしていたら、ずっと黙ったままだったルカが自分達を見上げていた。彼と視線を合わせるようにノエルがしゃがんで「どうしたの?」とたずねてみる。ルカはノエルのスカートをつかみながら、一言。

「かあさんは、サンタのかっこうしないの?」

首を傾げながら言うルカに続いてマリアも「ママもしようよっ!」と。…これは困った。いい年してサンタの格好を子どもたちと一緒にするなんて、想像しただけでも恥ずかしい。「ちょっとそれは…」と苦笑しつつアレルヤに助け舟を求めるため振り返れば、アレルヤは妙に良い笑顔をしていた。

「そっか、マリアとルカはママにもサンタさんの格好をして欲しいんだね」

まるで自分が提案したんじゃない、子どもたちが言い出したから仕方がないんだ・とでも言いそうな笑顔を浮かべながらアレルヤは二人の頭を撫でている。そしてその問いかけに大きく頷く子どもたち。…ああ、これほどまでにこの場から逃げたいと思ったことはない。「そっかそっか。なら仕方ないね。ママにもサンタの格好をしてもらおうか」と、全く仕方ないと思っていない笑顔でアレルヤは言っている。「どうせならパパも一緒にサンタさんの格好しちゃおうかな」と調子に乗ったアレルヤはそんなことまで言い出した。するとすかさずルカが「とうさんはしなくてもいい」と両断。…今少しだけアレルヤに同情した。したけれども、一拍後に続いたアレルヤの言葉によってそれはすぐに一掃された。

「じゃあノエル。ノエルの分は明日買ってくるからね」
「…私の選択権は、なし?」

うん、ないよ。そう笑顔で言い切ったアレルヤを、明日どうやって家にいれないようにしようか。後24時間で考えなきゃならなくなった。

END
(20081221)





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