This is your day.

キャンドルの炎が私たちの言葉に揺らめく度、甘美で透明な煙が鼻腔を突いた。まるで2つ以外の心が存在するように煌々と靡いては、あなたの影をそこかしこに映し出していた。

誕生日だから祝って、なんてあなたが簡単に言うものだから、私はもう何ヶ月も前から頭を抱えたものだった。
いや、正直に言おう。あなたに強請られるもっとずっと前から頭を悩ませては、起きがけの鏡に映る自分を覗き込み、黒の中に一筋流れる銀色に溜息を吐き出してきた。

あなたのことを想えば想うほど、こんなに胸が浮き立つというのに。そのどれもがあなたを満足させる自信になんて微塵も繋がらなくて、仕事中付箋に閃きを書き出しては夜に見返して首を振り屑籠を鳴らす、そんな生活を繰り返していた。

それでも考え、あぐねいて、恥を忍んで部署違いの後輩に聞いてみては笑われたりして。それでもようやく自分なりの道を見つけて漕ぎ着けた今日という日を、無駄にする気は毛頭なかった。

喉がカラカラだ。咳払いが止まらない。ワインで潤そうとすれば、あなたが腰を上げたあの時よりだいぶ軽くなってしまった現実に気がついて、恥じらいながら右手を下ろす。ネクタイがどうにもキツく感じたけれど、弛めるのも癪に思えた。

あなたと話す少し前から、右の懐をコツコツと叩くものがあった。早くここから出してくれという彼の訴えを、私は何度も見逃していた。出遅れてしまったな。水の音に聞き耳を立てながら、それを取り出す。開けてみる。細い細い螺旋のプラチナに抱かれるこれは、月明かりとキャンドルの細い光だけが支配する部屋の中であっても、七色のファイアを燦々と輝かせていた。

これを渡したら、あなたはどんな顔をするのだろう。この眩い美を甘受してくれるのだろうか。いや、きっと言葉にならない言葉を叫びながら、触れられもしないのだろうな。もしかしたら、「わたしなんかに」なんて言葉が飛び出すかも知れない。
あなたは明晰な人だから、考えなくても分かるだろうに。あなたの頭脳が導き出したその解は、ダイヤモンドに結びつきやしないことを。

水の音はまだ鳴り止まない。それなら私は、いくらでもあなたを待ち焦がれよう。懐中、星なんて冷やしながら。


Franciumの羽並さんからいただきました。Twitterではずっと仲良くさせていただいていたのですけれど、まさかお誕生日夢がもらえるとは思わずとっても嬉しかったです。羽並さんの詩のような綺麗な日本語で描き出される可愛らしいリーブさんの情景にとても幸せをいただきました。タイミングを逃していたんですがいい機会だったのでリンクを貼りました、ブックマークの欄が幸せに埋め尽くされてゆく、しあわせ……ありがとうございました!これからもよろしくね!