boys, be ambitious!


(銀さんがパチンコしてるだけの話)



パチンコ屋には様々な人が集まる。
ある人は生活保護の支給される日と、たまにその次の日にだけ訪れ、それ以外の日は一切こないーー実はこういう人は一人ではなくて結構多い。それだけでその人がどういう生活をしているのか簡単に察することができる。皆虚ろな瞳で、目についた台で一心不乱に玉を回し続ける。
ある人は綺麗な身なりをして週に1回くらいやってきて、台をしっかり見極め、毎回買った玉よりも多い量の玉を景品交換にもってきては帰ってゆく。これもよくあるパターンで、パチンコで金を稼いでいる人たちだ。実はパチンコというのはだいたい当たりの出る周期が決まっていて、台の上の表示をみればだいたいどの台に当たりが出やすいのかを知ることができる。それは台ごとに異なるが、そのくらいインターネットで調べればいくらでも出てくるので、新台に挑戦したりしなければ負けることはまずない。彼らは確かに賢いが、完全にビジネスで来ている彼らは娯楽施設にきているというのに全く楽しそうに見えないーーでは前者の人々が楽しそうかといえばそんなこともないのだけれど。


そんな中に珍しいタイプの人間もいる。


「お姉さん、今日は何処の台が当たりそうよォ〜?」
「あら坂田さん、こんにちは。そうですね、あの台とかどうですか?」
「おっ、ありがとう。お姉さんに言われた台は結構当たるからね、今回も期待してるよ」


銀髪の男はおそらく自営業なのだと思う。上述の人々がある決まった周期でやってきて同じような金額を落としてゆくのに対して、この男が此処にくるペースはまちまちで、落とす金額も日によって異なっているからだ。そして珍しく楽しそうにーーそう、楽しそうにパチンコをしているので、つい目がいってしまうのだ。今度こそ当てるぞ、と瞳を輝かせて元気よくハンドルを回したりーーそれは最近のパチンコでは殆ど飾りくらいの意味しかないのだがーー負けると本当に落ち込んでどんよりとした雰囲気のまま帰ってゆく。当たれば飛び跳ねて喜んで満面の笑みで景品を交換してゆくのだ。ある日あまりに落ち込んでいた男に声を掛けて名前を知って以降、こうして来るとちょっとした話をするような間柄になった。もう1年も働いているのでどの台が当たりやすいかなどだいたい分かっている。それを教えてやればまるで疑わずにその台を一日中回し続ける。ーー一回当たったら暫くは当たらないと思うけどなあ、とまではさすがに言わない。


「お姉さん、今日も可もなく不可もなくってところでよォ、一回くらい大当たりしてがっぽがっぽしてみたいもんだよなァ」
「わたしは此処でバイトをしているだけでパチンコをやるわけではないので…堅実に稼ぐのがよいのでは?」
「なに夢のないこと言ってんだ。いつまでも子どもの心を忘れちゃいけないってジャンプで習わなかったワケ?」
「わたしちゃお派だったので…」


くだらない話をしながら景品を交換する時間も嫌いではない。
たまに隣にグラサンの男を連れていることもあるが、そのときはあの男の同じようなことを言っていたっけ。こうして変える時には死んだ魚のような瞳をしているのに、瞳を輝かせるのはもっと別の時でいいのではないだろうか、少年というのはパチンコに命を掛けるような情熱を注ぐ存在だっただろうか。男の言葉には突っ込んでよいのかよくわからない部分が多い。


「ありがとうございました、またお越し下さいませ」
「おう、また来るわ。次こそ店中の景品全部頂いてくからなー!」


今日もまたパチンコ屋には様々な人が訪れる。
わたしの趣味はそんな人々を観察して、私生活を想像することだ。