死柄木弔に



いつからだろう。
自分は誰からも求められてないことに気づいたのは。
また自分もそれを望んでいないことが当たり前になってしまったのは。

いつの間にか私の世界は色を失い、モノクロになってしまった。


初めは親から見放されたことだったと思う。
個性婚をした両親から生まれた私は望まれた個性を持たず生まれた出来損ないだった。


小さい頃ある日偶然聞いてしまった

「なんであんな子を生んでしまったんだろう」
と言う母親の言葉は今も一向に忘れることは出来ない。
両親の望んだ個性を宿した妹が生まれてからは自分なんて存在しないかのように扱われた。
両親から好きなものや可愛いもの欲しいものを与えられ、愛情を注がれる妹を最初は妬ましく思う気持ちがあったが
その思いをばねに行動に起こす程の気力もなく、
仕方ないと諦めてしまう方が早かった。

期待されず、求められず生きていくと心の中には虚無感だけが募っていく。



少し年齢を重ね、親元を離れ
学校に通うようになっても、何か自分の心に変化が訪れる訳でもなかった。
何の喜びもなく、
クラスメイトに対しても何となく作り笑いをして、上辺だけ仲良くして代わり映えのしない毎日を送る。

これから先、何年もこんな日々が続くことに絶望を感じた。


ある日
いっそ死んでしまった方が楽なのでは?
そう気づいた。

そして私には初めて、明確な目標が出来た。



しかし私の中の臆病な部分が自ら命を絶つという行為を邪魔をする。


どうしてもあと一歩が踏み出せない。


私は今もまだ
自らの人生を終わらせることも出来ず、この世界に馴染むこともできず、ただただ無意味に毎日を過ごす。


今日も明日も。ただ息をして食事をして寝て。
なんてくだらない。



あの日彼に出会うまでは。



ある日私は目撃してしまったのだ。
たまたまフラフラと入り込んだ路地裏で
人の命が尽きる瞬間を。
その男は触れただけだったのに。
触れられた相手はぼろぼろと崩れ、
辺り一面は血の海が広がった。

初めて、人が死ぬ瞬間を目にした。それはあまりにも簡単で、一瞬の出来事で、目を奪われてしまった。

「っ…」

思わず息を呑んだ時、その男の視線が私の存在を捕らえる。
その男の顔は掌の様なもので覆われていたからはっきりと分からなかったけれど。

「何お前?コイツの仲間?
それともあァ…女か」

その男がこちらに近づいてくる。
きっと私はこの男に殺されるのだ。




「よかったな。今からお前もすぐコイツの所に連れてってやるよ」


彼の指が4本、私の首元を捉える。

やっとだ。やっと、私はこのくだらない世から消える。
待ち望んだ瞬間に静かに瞳を閉じる。


けれど


「…?」


彼の5本めの指が私に触れることは無かった。

「止めた」

「…なん…で?」

「死にたがってる人間を殺す程、俺はお人好しじゃないからな」

予想外の言葉に目の前が真っ白になる。


「やだ、やだ!どうして…?!?!あなたが触れるだけでしょ?!?!そうすればさっきの人みたいに簡単に死ねたのに」



どうして、

誰も私を殺してくれないの?

自分の目から涙が溢れる。こんなにも泣いてしまったのは生まれて初めてだった。





「じゃあさ、」



俺にお前を殺させたいと思わせてよ。


これが私、みょうじなまえと
死柄木弔の出会いだった。









「ねえねえ死柄木さん!そろそろ私のこと殺したいなって思わない?!」

「ならないな」

「えー?!」


あの日から私は死柄木さんについていき
、今も彼の元にいる。
死柄木さんは私のことを殺したいと思ったら殺してくれると言ったけれど。
一向にその気になってくれない。

「どうしたらいいの?!」

どうしたら彼に殺してもらえるのだろうか。


今日も私は死柄木さんに着いて行き、
彼が人の命を破壊する瞬間を目にする。



「いいなぁ、あなた。死柄木さんに殺してもらえて」


もう跡形もなく崩れてしまった先程まで人間の姿をしていたものに話しかける。
返事はもちろんないけれど。


「オイなまえ、ぼけっとしてたら置いてくからな」

「え?あ、待って!」

さっさと歩きはじめる死柄木さんの元へ走る。



「何が違うんだろうなあ」

さっきの人と私。





「もう諦めろよ」

「?何が?」

「俺に殺されたいってやつ」

もうその気ないし。と言われる。



「…どういう…こと?」






「俺と生きるじゃだめ?」


「死柄木さんと…生きる?」


確かに死柄木さんと出会ったことでモノクロだった私の世界は色づいた。
あんなにつまらなかった毎日が楽しくて、充実している。
そして死柄木さんが隣にいるのは心地が良い。
私は死柄木さんに殺されたいという気持ちがいつの間にか必要とされたいという気持ちに変わっていたことに初めて気がついた。



「だめ…じゃないかもしれない…」

「あっそ」


まぁ、俺の元から離れようとしたら、その時は殺してやるよと言われたけれど

そんな気は毛頭ないので、

やっぱり私は彼と生きることを選択することにした。




fin.



礼奈子様

この度はリクエストありがとうございました。
自殺願望のあるヒロインと死柄木さんのお話、書かせていただきました。

これからも当サイトをよろしくお願い致します!