心操人使と



私には好きな人がいる。
同じクラスの心操人使くん。

彼は私たちのクラスの中で一際目立つ存在だった。
入学して、一緒に学校生活を送る中で
何となく気になる存在だったけれど、

体育祭で、ヒーロー科の人達と対等に戦う姿を見て。
緑谷くんと戦い、迷いなく自分はヒーローになりたいと叫ぶ心操くんを見て、

今まで経験したことがないくらい。それこそ全身の血が沸騰してしまったんじゃないかと思うくらい身体が熱くなって
心臓がバクバクと鼓動した。



あの日私にとって誰よりも心操くんはヒーローだった。





「ーーさん、おーいみょうじさん?」

「え?!な、な、何かな?!」




そして

私が恋をする心操くんは今、私の隣の席だ。自分の席運、嬉しいけれどずっと好きな人が隣にいるなんてドキドキしてどうにかなってしまいそう。


そんな彼に突然話しかけられて思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

「ぼーっとしてたけど、大丈夫?」

「う、うん!なんでもないよ。どうしたの?」


まさか心操くんのことを考えていたら、心操くんに話かけられたなんて言えなくて。平然を装う。


「次の授業の教科書忘れたから、見せてくれないか?」

「教科書?も、もちろん!!いやむしろ私の貸すから心操くん使って!」

「それじゃみょうじさんが困るだろ」


「…!!」

小さく笑う彼の顔を見ると
好きという気持ちが爆発してしまいそうになる。
しかも反対側の子もいるのに、私に声をかけてくれたことがどうしようもなく嬉しい。


(うぅ…好きすぎる…)


「席、くっつけていいか?」

「も、もちろんだよ!」

がたがたと音をたて机を移動させてながらはやる心を無理やり落ち着けさせる。
次の授業開始を告げるチャイムが鳴る。

(ち、近い…!!!!!!)

落ち着くのはやっぱり無理そうだ。







俺には好きな子がいる。
同じクラスのみょうじなまえさん。

入学して最初の方は同じクラスのクラスメイト。そんな風にしか思っていなかったのに。




体育祭のあの日。俺が最終種目のトーナメント戦で緑谷に負けた後。




「心操くん!!!」

何となく大人しいイメージのみょうじさんが俺に向かって一目散に走りながら駆け寄ってきた。


「心操くん!凄かった!!っ…!!とってもかっこよかったよ!!」

息を切らしながら俺のことを褒めるみょうじさん。

「負けちゃったからかっこよくはないだろ」

「そんなことないよ!!」

かっこよくない、と否定する声を遮る姿に思わず驚く。

「心操くんはかっこいいよ、ヒーローにないたいって強い気持ちが誰よりもあって、それに向かって1歩ずつ努力してるもん!私にとって心操くんは誰よりもヒーローだよ」




誰よりもヒーロー

そんなこと初めて言われた。
今まで個性のせいで否定ばかりされてきた目標。
それをみょうじさんは迷いなく肯定してくれた。


「…ありがとうみょうじさん」

「う、ううん!ごめんね。私もいきなり訳わかんないこと色々言っちゃって…」


私も心操くんに置いていかれないように頑張らないと!と付け加えるみょうじさんに俺は一瞬で恋をした。





そんなみょうじさんは今、俺の席の隣だ。このチャンスを逃したくなくて、
もっと近づきたくて。
わざと教科書を忘れたフリをした。

お互いの肩が触れ合いそうなくらいの近い距離。
みょうじさんからはどことなく女の子らしいいい香りがする。


綺麗な字で黒板の文字をノートに書く度、サラサラと揺れる髪も
問題を解く度、悩んだり解けて嬉しそうな顔になったりところころ変わる表情も全部。


(好きだ)







いつか


俺の

私の



この気持ちに君が気づく日が来るのだろうか。


(言えないなあ…)

(…気づけよばか)



2人がお互いの気持ちに気づくまで、きっとあと少し。

















「人使くんって、いつから私のこと好きだったの?」

あれから少し経ち、あの時より少し自信を持った俺からなまえに告白し、
先日、やっと恋人同士になった俺たち。

放課後、手を繋ぎながら寮に一緒に帰る途中。なまえがおもむろに質問する。


「ん?体育祭の時かな」

「え!私も体育祭の時だよ」

「…まじかよ…なまえは俺のことなんて絶対恋愛対象として見てないと思ってた」

「え〜!隣の席で毎日心臓が壊れるくらいドキドキしてたのに」


なんだ、俺たち長い間同じ気持ちだったんだな。

今更わかったその事実が無性に面白くて思わずお互い顔を見合わせる笑い合う。


「ふふ、大好き人使くん」

「俺も。好きだよなまえ」

これからはずっと、想いを告げられなかった何十倍もの時間、一緒にいよう。



fin.



cherry様

心操くんリクエストで両片思い、書かせていただきました。初めて心操くんを書きましたが楽しかったです。
ありがとうございました!