「二口ぃ」
不安そうに学校の校門から俺に近づいてきたのは俺の好きな女の子であるみょうじで、みょうじとは学校は違うが家が近所の幼馴染みでたまにこうして一緒に帰っている。もちろんみょうじに迎えに来させるわけにはいかないので、俺が迎えに行っている。みょうじは泣きそうになりながら俺を見上げた。
「どうした」
「私病気かもしれない」
そんなことを涙目で言うものだから俺も本気で心配してしまう。これは本格的にダメなやつかもしれない。実は癌ですなんて言われたらどうしよう。俺は来るであろう衝撃に備えた。
「言ってみろ」
「二口見てると動機が激しくなる……」
ポカンと口を開けてしまう。こいつもしかして俺のこと。みょうじはチラリと俺を見て頬を少し赤くした。
「なんだか顔も熱くなるし……」
確定的だ。こいつは俺のことが好きなんだ。そう思ったら、俺の頬も熱くなった。
「二口なんか菌もってるんじゃない?」
「人を感染源みたいに言わないでくれる?」
どんだけ鈍感なんだよ。てか自分の気持ちに気づかない高校生女子ってどうよ。しかも本人に言いに来ちゃってるし。そう思うとおかしくなって俺はつい笑ってしまった。
「なに笑ってるの!」
みょうじは憤慨したように怒る。俺はしばらく笑いが止まらなかった。
やっと笑いが収まってみょうじを見るとみょうじはふくれっ面で横を向いていた。
「悪い悪い」
みょうじの頭をポンポンなでるとみょうじは嬉しそうに目を細めた。こんなことで機嫌が直るなんて可愛いやつだ。
「で、俺を見るとなんだって?」
「動機が激しくなってね……、胸の奥がこう、こう……」
「キュンとなる?」
「そう!そんな感じ!!」
みょうじは我が意を得たりとばかりに頷く。ここまで言って気づかないもんかなあと俺はまた笑いそうになるが、ここで笑ったらまたみょうじが膨れるのでぐっと我慢する。
「それ、なんて言うか教えてやろうか?」
「病名?なに?治の??」
みょうじの顔がパッと明るくなる。
「治るかどうかはわかんねーけど……」
俺はみょうじの左鎖骨あたりをトンと軽く突いた。
「恋心」
「……………………………は!?」
みょうじはブワッと顔を赤くする。
「そ、そんなわけ……っ!」
「ないの?」
わざと首を傾げてやるとみょうじは赤い頬をさらに赤くした。
「う、うわー!私とんだ間抜けじゃない!!」
そう言って頭を抱えるものだから俺は爆笑してしまう。みょうじは「笑うな!」とご立腹だ。
「まあいいじゃん」
「よくない!」
「好きな人にはもっとちゃんと告白したかった」となんとも可愛らしいことを言ってくれる。そして少し泣きそうな顔になる。
「……二口は私のことなんてどうにも思ってないよね」
「は?」
「ごめん」
そう言ってどこかに逃げようとするものだから、俺は急いでみょうじの腕をつかんだ。
「まてまて!なんでそうなるんだよ!」
「だって……こんな鈍感女嫌でしょ?」
自覚あるのかと驚いたが、今はそんなことに構っている余裕はない。
「俺、お前のそういうところ、可愛くて好き」
「!!」
みょうじは少し涙で濡れた目でそっと見上げた。
「こ、告白と受け取ってよろしいですか?」
「よろしいですよ」
みょうじの腕を離すとみょうじは自分の目元をグイグイこすった。そして自分の左胸を抑えた。
「また心臓が……」
「キュンときた?」
「それです……」
弱々しく言うみょうじに俺の心臓もキュンときたのだった。
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