なまえと付き合ってから何年経ったかな?と考えるくらい長い付き合いで、未だになんでこんな俺と付き合ってくれたのか分からない。主将としても先輩としても頼りないし、不作とか言われた代のバレー部で大した活躍も出来なかった俺なんかと、本当にどうして…と言えばきっと怒るだろうから絶対口にはしないけど疑問に思うのだけは許されるだろう。心の内に秘めるだけならバレはしないはずだ。

そんな俺と現在も別れることなく付き合いの続くなまえとは、高校を卒業してから二年ほど経つ頃に同棲を始めた。同棲するにあたってなまえのご両親に許可をもらう挨拶に行った時なんかは面接の時や告白する時よりも緊張したのを覚えている。

ピシッとした堅苦しすぎないスーツを着てガチガチな表情の俺とは反対に柔らかい表情のなまえは対称的だったけど、思ったよりも厳しい言葉をもらうことはなく、むしろこんな娘と同棲してもいいだなんて人がいるとは思わなかったと言われたくらいで。あっさりとは言わないまでも許可をもらえたのは良かったと盛大に息を吐き出した俺を笑って緊張するよなぁとポンと肩を叩くなまえのお父さんは男の俺から見てもカッコよかった。

同棲してから付き合っている頃は見えなかった部分なんかも見えてきて、ケンカも、まあちょっとはしたけど別れようとかそんなことは思わなかった。なんて言うか、だいたいケンカになる時の原因は俺のネガティブ思考だったり、俺って頼りないしなぁとかそんなことを口にした時に起こる。就職した俺とは違い大学に進学したなまえの生活リズムが違うのだから仕方ないとは思うんだけど、なまえの帰りが遅くて、それの連絡がないとか、レポートの作成で夜更かしを頻繁にして寝不足からか顔色が悪いだとかそんなので言い合うのが常だった。まあ心配から来るケンカというか言い合いだから悪いことじゃないんだけど、一緒に住む前はそんな言い合い自体なかった俺たちからすると結構な衝撃だったと思う。

そんな俺が結婚を意識したのはなまえが大学卒業を間近に控えた頃だ。工業高校を卒業して英文科のある大学に入ったなまえはその語学力を活かした仕事をしたいと話していた。もちろん就職先なんかもそれに因んだ場所だったし、ほぼ受けた試験は内定をもらったとも聞いていた。だからこれまで以上に生活リズムが合わなくなるかもしれないと思ったら、このままじゃいけないなと漠然と思ったのがたぶん結婚しようと思った決め手というか瞬間だったと思う。

それからは、まず初めになまえに言う前になまえのご両親に結婚しようと思っていることを伝えて、その後両親に報告した。どちらからも反対されなかったのは良かったけど、やっぱり同棲の許可をもらう時よりさらに緊張した。働いてると言っても俺の給料なんてたかが知れてるし、こじんまりとした身内とごく僅かな友人だけの結婚式が挙げられればいいかなと思っていることを伝えたら、資金をいくらか出すからしっかりした式を挙げるようにと言われてしまった。なんでも俺の親もなまえのご両親も双方共、そういった資金を貯めていたらしく初めてそんな話を聞いて少しばかり目が潤んだのは内緒だ。

そして家に帰って指輪と一緒にプロポーズをした。少しサイズの合わない指輪はこの際ご愛嬌ということで目をつぶってもらって、泣き笑いをするなまえに結婚指輪はサイズぴったりするからと告げた。涙ながらにコクコクと首を縦に振るなまえに可愛いなぁなんて思っていたのはここだけの話だ。

大安吉日なんて運よくそんな日を押さえることが出来たのは、一重に二口の人脈があってこそで、この後輩にはほんと頭が上がらない。生意気なだけの後輩だと思っていたのに実はよく周りを見ていたし、やろうと思えばきちんと出来るタイプで常日頃からやってくれれば俺も苦労しなかったになぁなんて昔はよく思ったものだ。

招待客は俺となまえの両親はもちろんのこと、それから俺たちの自慢の伊達工バレー部と追分監督だけという少人数だけど、とても幸せな結婚式と披露宴だった。
鎌ちとかわけの分からない歌を歌い出すし、途中で上着を脱いでネクタイまで外してまさかここで脱いだりしないよな!?とハラハラしながら見ていれば笹やんに引っ張られてステージから消えて。二口と青根なんかは俺となまえの学生時代のメモリアルとか言いながらムービーを流し、見てるこっちが恥ずかしくなるくらいのラブラブっぷりでしたよー、なぁ青根?なんてやり取りをしたり、小原や女川は二口たちとはまた違ったアルバムを用意してくれた。一年トリオの作並、黄金川、吹上の三人はそれぞれ特徴が出る言葉と花束をくれて、マネージャーの滑津はなまえに綺麗ですとか次は私の結婚式に呼びますだとか言って涙ぐんでいた。追分監督は、お前たちは伊達工バレー部の名物夫婦だったからな、結婚式に呼んでくれて嬉しいだとか、お前は最高の主将だった。二口たちがやってこれたのはそれはお前が主将で、マネージャーがみょうじだったからだと言ってもらえた時は情けないけれど涙がこぼれそうになった。

そんな結婚式を挙げられたのも集まってくれた伊達工バレー部と監督、それから資金を出してくれた両親たちのお陰だ。もちろん、こんな俺を選んでくれて彼女になってくれ、結婚してくれたなまえのお陰でもある。


「――…め、くんっ、要くーん要さーん、要ー」

「ぅん、んんー…?」

「あ、起きた?」

「あ、れ…?なまえ?」

「ふふ、どうしたの?寝惚けてる?」

「あー…かも?なんかなつかしい夢を見たんだ」

「夢?どんな夢見たの?」

不思議そうに首を傾げるなまえを見ながら、緩む口元を隠せずにいれば、なあに?と含み笑いを浮かべる。

「んー、俺となまえの出会いから始まって、それで結婚式をみんなが祝ってくれた夢」

「ふふ、そんな前のことじゃないのにね」

「ほんとにな…うん、しあわせだなぁ」

「そうだね、わたしもしあわせ」

二人で顔を見合わせて微笑み合うなんてことない休日がこの上なく幸せだと感じた。相変わらず同棲時代から同じ家に住んでいる俺たちがこの家を離れる時は、きっと子供が出来た時だろう。いつまでもこんな風に過ごしたいねなんて口にするなまえに少し冷たい春の風に吹かれながら、ぼんやりと俺もと頷いた。

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