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慌てて支度をする。
結局、同じベッドで寝ていた理由は教えてもらえなかったし、その上今度は急に出かけるときた。
相変わらず少し強引だけど、会話から察するに、海馬君は今日一日を空けるために連日遅くまで働いていたという事だろうか。だとしたらどうしてだろう。

顔を洗い、顔や髪型を整える。服は少し迷ったけれど、シンプルな白のブラウスにデニム生地のパンツにした。それに小さなショルダーバッグを合わせれば、私のシンプルな休日スタイルの完成だ。
パンプスに足を通して部屋を出ると、私は玄関口へと小走りで向かった。


なんとなく予想していたことではあったけど、やはりそこにはすでに海馬君の姿があった。いつもの白いコートは羽織っておらず、黒いシャツにパンツという出で立ちだ。
軽く腕を組んで壁に寄りかかるという姿勢だったけれど、私の足音を耳にしてこちらに近づいてきた。

「支度はできたようだな」
「う、うん」
「それでどこに行きたい。好きな場所を言え。遠慮は許さん」
「え…えーっと…」

頭の中で、休日はいつもどこへ出かけていただろうと思案する。杏子や友達と遊ぶときは、一緒に洋服を見たりカフェで無駄話をすることが多かったけど、それ以外は近くのスーパーで買い物をして帰るくらいしか行動パターンがなかった。


「…じゃあ、駅前のショッピングモールに…」
「良かろう。向かうぞ」

そんな所に興味はない、と言われるかと思っていたけれど、驚くほどあっさりと許可してもらえた。海馬君は使用人さんに玄関の戸を開けさせ、そのまま中庭へと降り立つ。そこにはリムジンの車が停まっていて、海馬君に続いて乗り込むと、車は静かに走り出した。



「到着致しました」

停車し、運転手さんがドアを開けてくれた。
私と海馬君が降りると、車はどこかへ走り去っていった。
目の前には人で賑わうショッピングモール。本当にこんなところに連れてきてもらってよかったのだろうか、と私は隣に立つ海馬君を横目でちらりと見上げた。

「と、とりあえずどこかお店に入ろうか。もうそろそろお昼だし、朝ごはんもまだだったもんね」
「構わん。好きな店を選べ」

お互い朝から何も食べていない事を考え、まず食事をするために私達はレストランフロアへと向かった。

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