【08 俺の知ってる君ーWZー】
俺がSEVENTEENとしてデビューしてから、初めてなまえに会った。
と、言うよりなまえがデビューしてから、忙しいのか全然会えなかった。
カトクも今年の初めが最後。俺もデビューに向けて忙しくて連絡が取れなかった。
だから、今日出演者の中にカルミアの名前があって嬉しかった。
久し振りになまえに会えると思って。
なのに、カルミアの楽屋はタバコと香水の匂いが混ざって臭いし、なまえの姿はない。
それなのに淡々と進んでいく挨拶に違和感を感じる。
いや、正確には違和感は、ある確信に変わりつつあった。
デビューした当時、なまえは本当に輝いてた。
よく笑う、明るい子だった。
なのに、気が付けばなまえはテレビで殆ど笑わなくなり、話すこともなくなっていった。
メンバーが時折見せるなまえへの冷たい視線、隠しきれてない痣。
もしかして、虐められてる?
そう思ったけど確信はなかったし、なまえに聞いてもそれとなくはぐらかされてきた。
だけど、今日カルミアの楽屋に来て、カルミアのメンバー達の態度を見て、確信になった。
なまえが虐められてると確信したと同時に、今まで気付かなかった自分への怒りが込み上げてくる。
何とか無理矢理にでも時間を作ってもらってなまえに会うべきだった。
忙しくても連絡ぐらいするべきだった。
SG「…あれ?」
JN「どうしたの?」
ステージに上がってくるカルミアを見ながら、スングァンが首を傾げる。
SG「なまえヌナが着てる上着って、ジフニヒョンのじゃない?」
MG「は!?」
HS「本当だ!だから上着着てないのか!」
うるさい。
MG「何でヒョンの着てるの?」
WZ「ウォヌが肩テーピングしてあげたんだよ。んで、そのままだとテーピング見えるから俺の貸した。ただそれだけだ。」
嘘ではない。
だけど、メンバー達になまえと知り合いなことを隠してた罪悪感は多少なりともある。
まあ、正確には隠してたと言うより、言うタイミングを逃したんだけど。
HS「それならさっきそう言ってくれよ!」
WZ「別にいいだろ。」
SG「ヒョン、本当にそれだけですか?」
WZ「…あぁ。」
スングァンだけ納得してない表情を浮かべてたけど、ミンギュとホシの意識はウォヌに向かったようだ。
HS「つか、ウォヌ!お前まじ何なんだよ!」
WN「何が。」
HS「絶対なまえと知り合いだろ?」
WN「違うよ。俺はね。」
は?どう言うことだよ!なんて騒いでるホシ達に、スンチョリヒョンが「お前らうるさい!」と一喝してようやく静かになった。
オープニングが終わり、ステージ用の衣装に着替えに楽屋に戻る。
ウォヌはまだホシ達に尋問されてた。
『セブンティーンの皆さん、スタンバイお願いします。』
スタッフさんの声と共にステージ袖にスタンバイをする。
なまえに俺がステージに立つ姿を見せるのは初めてだな…。
ちょっと緊張する。
WN「ジフナ。」
WZ「ん?」
WN「あとで詳しく話聞かせて。」
おうと小さく返事をして、ステージに飛び出す。
歌って、踊りながら、なまえを探した。
なまえは手を握りながらキラキラした目で俺を見てて、それだけで頑張ってデビューして良かったと思った。
ステージを終え控え室に戻る。
MG「見ました!?なまえちゃん!凄いキラキラした目で俺のこと見てたの!」
HS「は?ミンギュじゃなくて俺のこと見てたんだよ!」
SG「違います!僕のこと見てたんです!」
楽屋に向かいながらワーワー騒いでるメンバーを見て、なまえと知り合いだってことは一生黙っとこうかなんて思ってると、スマホが震えた。
なまえ
久し振りのなまえからのカトクに、俺は急いでオープニング用の衣装に着替えて楽屋を出た。
カルミアの楽屋の近くの壁に寄りかかってなまえを待ってると、ペディンを着たなまえが俯きながら楽屋から出て来た。
WZ「なまえ。」
名前を呼ぶと、なまえは顔を上げ、嬉しそうに「オッパ!」と駆け寄って来た。
その笑顔は昔と何も変わってなくて、嬉しくなる。
頭を撫でてやると、なまえの目に涙が浮かんできてる。
WZ「泣いたらメイク取れるぞ。」
「うん、だから我慢してるの!」
涙がこぼれないように上を見ながら答えるなまえは、やっぱり俺が知ってるなまえとなんら変わってなくて微笑んだ。
涙が溢れないようにパタパタと手で涙を乾かしてから、再び俺に視線を戻す。
WZ「ちゃんと食ってるか?」
「…うん。私が食べるの好きなの知ってるでしょ?」
ああ、知ってるよ。
小柄なのによく食うなっていつも言ってたから。
でも、今は全然食ってないだろ。
ガリガリだ。
WZ「嘘つけ。ちゃんと食え。じゃないとお母さんも心配するぞ。」
「…そうだね。あ、オッパこれ!」
そう言ってペディンから俺のジャケットを取り出す。
「ありがとうね!」
WZ「おうって、あったけーな。」
ペディンの中から出て来た俺のジャケットは、なまえの体温でぬくぬくとしてる。
「オッパ寒がりだから温めてあげたの!」
WZ「そうか、サンキュー。」
受け取ったジャケットから、なまえの匂いがする。
あいつらに何か言われそうだな…。
「てかオッパ!何でデビューしたこと教えてくれないの!?」
WZ「いや、その前に気付けよ。さっき挨拶行った時もいたぞ、俺。」
「ごめん。普段テレビもネットも見ないから…。それにさっきはオッパだって声かけてくれなかったじゃん!」
まあそうだけど。
「しかもオッパ芸名使ってる?ジフンって聞いてないよ?」
WZ「うん。ウジって名前で活動してる。」
「ウジ…ねぇ、それじゃ気付かないよ!」
WZ「なまえなら声で気付くだろ。」
俺の言葉に確かに!って大袈裟なリアクションをするなまえは、やっぱり俺のよく知るなまえのまま。
メンバー達はなまえが大人しいなんて思ってるけど、実際は妹気質全開の甘えん坊だ。
「オッパ怒ってる?ごめんね!」
WZ「ふはっ!怒ってないよ、てかお前には怒れないの知ってんだろ。」
「えへへ!」
ずっと話してたいと思うけど、そうもいかない。
FY『終わった後も楽屋に残れってなに?本当ムカつく。』
SR『聞こえるから静かに。それよりあの子は?』
カルミアのメンバーの声が廊下に微かに聞こえた瞬間、なまえから笑みが消えた。
「ごめんオッパ、そろそろ行くね!」
WZ「あ、あぁ。連絡する。」
「うん!」
なまえは小さく微笑むと、声のする方へと走って行った。
→
ノベルに戻る I
Addict