ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode33

『気づけば、隣に』

― いつもの日常の中に、特別な存在が増えていく。―

Day:Friday(共同生活33日目)



Scene2

『それぞれの時間』

Friday|Afternoon



Station Road



朝。



404 HOUSEから駅までの道。



いつもなら、

スンチョルは車で移動する。



でも今日は、

車の点検修理の日。



「まさか歩いて駅まで行く日が来るとは思わなかった。」



スンチョルが笑う。



チアキも少し笑った。



「いつも車なんですか?」



「うん。」



「便利だからね。」



少し間を置いて、

スンチョルが続ける。



「でも、たまにはこういうのもいいかも。」



朝の住宅街。



急ぐ人。



通学する学生。



いつもなら車の窓からしか見ない景色。



二人はゆっくり歩いていた。



並んで歩く足音が、

まだ少しだけぎこちない。



けれどそのぎこちなささえ、

どこか心地よく感じてしまう。



「チアキとも一緒に行けたし。」



チアキはその言葉に、少しだけ視線をそらした。



ほんのり耳が赤くなる。



「……そうですね。」



たったそれだけの返事なのに、

胸の奥が静かに熱を持つ。



「チアキって、いつも駅まで歩いてるの?」



「そうですね、大体歩きです。」



「でも、荷物が多い時は駅までタクシー使ってます。」



スンチョルは頷く。



「大変だよね。」



「国際線って。」



チアキは少し笑う。



「慣れました。」



その言葉を聞いて、

スンチョルは少しだけ眉を下げる。



「その言葉。」



「よく聞くけど。」



「無理してる人ほど言う気がする。」



チアキは一瞬黙る。



以前なら、

「大丈夫です。」

とすぐ返していた。



でも。



最近は、

その一言を口にする前に、

ほんの少しだけ立ち止まるようになった。



誰かに見抜かれることが、

少し怖くて。



でも同時に、

見抜いてほしい気持ちもある。



「……そうかもしれません。」



小さな声。



スンチョルはそれ以上聞かなかった。



ただ、

「気をつけてね。」

とだけ言った。



その短い言葉が、

妙に胸に残る。



駅に着く。



「じゃあ、行ってきます。」



「うん。」



「頑張って。」



「ありがとうございます。」



それぞれ反対方向へ歩き出す。



数歩離れただけなのに、

さっきまで隣にあった気配が、

急に遠くなる。



振り返れば届きそうなのに、

振り返らないまま進む。



その背中を見送る時間が、

思ったより長く感じられた。





404 HOUSE



昼。



家に残っているメンバーも、

それぞれの時間を過ごしていた。



ジョンハン



予定の合間。



近所のカフェ。



窓際の席でコーヒーを飲みながら、

スマートフォンを見る。



404 HOUSEのグループチャット。



スングァンが送った、

朝の写真。



何気ない一枚。



でも、

そこに写る家の空気が少し好きになっている自分に気づく。



以前ならただの連絡事項だったはずの画面が、

今は妙に気になる。



誰が何をしているのか。



誰がどこにいるのか。



たったそれだけのことが、

思っていた以上に気にかかる。





ウォヌ



自宅。



静かな部屋。



本を開く。



以前と変わらない休日。



でも。



ページをめくる合間に、

リビングの音を思い出す。



誰かの笑い声。



キッチンから聞こえる食器の音。



静かな時間が好きだったはずなのに、

今は少しだけ、

賑やかな時間も恋しく感じる。



本の中の文字を追っているはずなのに、

ふとした瞬間に浮かぶのは、

あの家のざわめきだった。



誰かがそこにいるだけで、

部屋の温度が少し変わる。



その変化を、

もう自分は知ってしまっている。





ミンギュ



在宅勤務を終える。



パソコンを閉じる。



「買い物行かないと。」



冷蔵庫の中を確認する。



以前なら、

自分だけの予定として考えていた。



でも今は。



「何作ったら喜ぶかな。」



そんな考えが自然に浮かぶ。



本人はまだ、

その変化に気づいていない。



けれど、

気づかないふりをしているだけなのかもしれない。



買うものを選ぶ指先が、

いつの間にか少しだけ慎重になる。



誰かの顔を思い浮かべるたび、

ただの食材が、

少し違う意味を持ちはじめる。





スニョン・スングァン



仕事終わり。



二人で合流。



「今日疲れた。」



「分かる。」



話しながら歩く。



でも、

気づけば話題は404 HOUSEのことになる。



「明日のイベント何するんだろ。」



「楽しみじゃない?」



「まあね。」



笑い合う。



その笑いの奥で、

それぞれが同じ場所を思い浮かべている。



帰れば誰かがいる。



そう思うだけで、

少しだけ足取りが軽くなる。





女性メンバー



ユナ、ジウォン、チェリン、ソヨン。



それぞれ予定を終える。



仕事。



買い物。



家事。



別々の一日。



でも、

帰る場所は同じ。



一人で過ごしているはずの時間の中にも、

ふと誰かの顔が浮かぶ。



「今、何してるかな。」



そんな小さな問いが、

胸のどこかに静かに残っていく。





【STAFF NOTE】



共同生活33日目。



404 HOUSEで過ごす時間が増えても、

11人の人生が一つになるわけではない。



それぞれに、

仕事がある。



夢がある。



帰る場所がある。





だからこそ。



その日常の中で、

ふと誰かを思い出す瞬間が増えていく。



一緒にいる時間だけではなく。



離れている時間にも、

相手の存在が、静かに輪郭を持ちはじめていた。



何気ない景色の中に、

何気ない言葉の余韻の中に、

その人の気配が残る。



会っていないはずなのに、

気づけば心のどこかで探している。



まだ名前のつかないその感情は、

確かにもう、

日常の一部になりつつあった。



次回 Scene3

『帰宅時間』

Friday|Evening



一日の終わり。



404 HOUSEへ戻ってくる11人。



玄関が開くたび、

自然に交わされる言葉。



「おかえり。」



その一言が、

少しずつ特別になっていく。




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