ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode5

『最初のミッション』

― 恋愛禁止なのに、一番近い距離 ―



Scene5

『思わぬハプニング』



午後5時2分。

キッチン。



残り時間は35分。



どのペアも料理は終盤に入っていた。



湯気。

包丁の音。

フライパンを振る音。



さっきまでのぎこちなさは消え、

それぞれが自然に声を掛け合っている。



チアキ × ミンギュ



「パセリ切りますね。」

チアキが小さな包丁を手に取る。



「うん。」



「俺、ソース仕上げるね。」



ミンギュはフライパンに生クリームを加え、

ゆっくり混ぜていく。



その時。



「あっ……」



小さな声。



チアキの指先に、

赤い線が浮かぶ。



包丁でほんの少し切ってしまった。



「チアキちゃん。」



ミンギュがすぐに気付く。



「指。」



「あ……。」



チアキは慌てて指を見る。



「大丈夫です。」



反射的に出た言葉だった。



「ちょっと切っただけなので。」



そう言って笑おうとする。



しかし、

ミンギュはその笑顔を見て、

少しだけ眉を寄せた。



「いや。」



「まず洗おう。」



「でも料理が……」



「俺がやるから。」



「行ってきて。」



優しい声だった。



チアキは少し迷ったあと、

小さく頷く。



「……ありがとうございます。」



洗面台で流水に指を当てる。



戻ってくると、

ミンギュはもうパスタを混ぜ終えていた。



「絆創膏。」



救急箱から取り出し、

チアキへ差し出す。



「貼れる?」



「はい。」



チアキが貼ろうとすると、

少し貼りにくそうにしている。



「貸して。」



「え?」



「指。」



チアキは少し戸惑いながら手を差し出した。



ミンギュは丁寧に絆創膏を巻く。



「……これで大丈夫。」



「ありがとうございます。」



「ごめんなさい。」



「なんで謝るの?」



チアキは少し驚く。



「迷惑を……」



「かけてません。」



ミンギュは少し笑う。



「こういう時は。」



「ありがとう、だけでいいよ。」



数秒。



チアキは照れたように笑った。



「……ありがとうございます。」



「うん。」



ミンギュも笑う。



その笑顔を見て、

チアキも少しだけ肩の力が抜けた。



しかし、

ミンギュの胸には、

別の思いが残っていた。



“まただ。”



“この人、本当に困っても最初に『大丈夫です』って言うんだ。”



その言葉が、

なぜか心に引っかかった。



スンチョル × ジウォン



「味見する?」

ジウォンがスープを差し出す。



スンチョルが一口飲む。



「美味しい。」



「でも黒胡椒、少しだけ足そう。」



「同じこと考えてた。」



二人は顔を見合わせて笑う。



「仕事でも。」

ジウォンが言う。



「相手が先回りしてくれると助かる。」



「分かる。」



「説明しなくても伝わる人は貴重だ。」



お互いに頷く。



初対面とは思えないほど、

息が合っていた。



ウォヌ × ソヨン



ソヨンがパスタソースを混ぜる。



「少し味見してください。」



ウォヌは静かに一口。



「……美味しい。」



「本当ですか?」



「うん。」



少し間を置いて、

ウォヌが付け加える。



「安心する味。」



ソヨンは照れたように笑う。



「それ、一番嬉しいです。」



二人はまた静かな時間へ戻る。



沈黙が、

もう気まずくない。



ジョンハン × ユナ



「危ない。」



熱い鍋を持ち上げようとしたユナを見て、

ジョンハンがさっと鍋敷きを差し出す。



「ありがとう。」



「こういうところ。」

ユナが笑う。



「本当に気付くよね。」



ジョンハンは少し照れ笑いを浮かべる。



「職業病。」



「それ、便利な病気だね。」



二人とも笑った。



スニョン × チェリン



「うわ!」



フライパンを振った勢いで、

ソースがコンロの周りに飛び散る。



「スニョン!」



「ごめんごめん!」



「料理じゃなくてアートになってる!」



キッチン中が笑いに包まれる。



「実況です!」



スングァンがマイク代わりのおたまを持つ。



「こちらスニョンシェフ!」



「現場は大混乱です!」



「やめて!」



全員が笑い声を上げた。



【Interview】

ミンギュ



「指を切った時。」



「チアキちゃん。」



「反射で『大丈夫です』って言ったんですよ。」



少し考える。



「まだ痛いはずなのに。」



「なんか……。」



「いつも一人で何とかしてきた人なのかなって。」



「そんなこと思いました。」



【Interview】

チアキ



「すごく助けてもらいました。」



「つい。」



「大丈夫です、って言っちゃうんです。」



少し困ったように笑う。



「癖ですね。」



「でも今日は。」



「『ありがとうだけでいいよ』って言われて。」



「なんだか、少しだけ安心しました。」



【STAFF NOTE】

絆創膏を貼る。



たったそれだけの出来事。



しかし、

その数十秒間、

二人は言葉よりも自然に相手を思いやっていた。



ミンギュは、

チアキが”助けられること”に慣れていないことに気付き始める。



チアキは、

誰かに任せてもいいと思える瞬間を、

少しずつ知り始める。



恋愛ではない。



それでも、

「守ってあげたい」と「頼ってもいい」。



その二つの感情の芽は、

まだ誰も名前を付けていなかった。



料理は間もなく完成する。



11人が同じテーブルを囲む、

初めての「SECRET DINNER」が始まる。



Episode5 Scene6

『夕食完成』




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