ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode43

『笑顔の理由』

― 笑顔は、強さの証とは限らない。―

Day:Monday(共同生活43日目)



Scene5

『何気ない会話』

Monday|09:30 PM



404 HOUSE。



夕食を終え、リビングには落ち着いた空気が流れていた。



テレビではバラエティ番組が小さく流れ、

ソファではスングァンとチェリンが笑いながら見ている。



ジョンハンは本を開き、ウォヌはコーヒーを飲み、

ミンギュはお茶を淹れ、スンチョルはニュースに目を通していた。



そんな中、

ラグの上でスニョンが足を伸ばした。



「よいしょ……。」



「今日は身体かたい。」



前屈を始めると、思った以上に背中が張っているのがわかる。



仕事の疲れと、無意識に入っていた力が、

静かな夜になってようやく表に出てきた。



その様子を見たチアキが笑う。



「え?」



「スニョンさんでもそんな日あるんだ。」



スニョンは苦笑した。



「あるよ。」



「毎日柔らかいわけじゃない(笑)」



何気ない一言だったが、

“スニョンさんでも”という言葉が妙に胸に残る。



いつもきちんとして見えるように、

疲れた顔を見せないようにしている自分を、

ふっとほどいてくれるようだった。



チアキもラグに座り、隣で足を伸ばす。



「私もやろ。」



二人で並んでストレッチを始めた。



チアキがスニョンを見る。



「身体柔らかいね。」



「仕事だから。」



「でも毎日やらないと、すぐ硬くなる。」



そう答えながらも、

平気そうに見せる癖が、言葉の端ににじむ。



大丈夫だと先に言うこと。



心配される前に飲み込むこと。



それが当たり前になりすぎて、

疲れていることさえうまく言えなくなっていた。



チアキは少し間を置いて言った。



「でも無理はしないでね。」



その一言で、スニョンの動きが止まる。



短い言葉だった。



けれど、気を遣いすぎず、見過ごしもしない。



その距離感が、静かに胸に届く。



今日もチアキは、スニョンの疲れに気づいてくれた。



駅で「疲れてる?」と聞かれたときもそうだった。



隠していたつもりのものを、また見抜かれる。



嬉しいのか、少し苦しいのか、

スニョンはすぐにはわからなかった。



ただ、胸の奥がじんと熱くなる。



見つけてもらえた安心と、

弱さを見られた照れくささが同時に押し寄せる。



「……うん。」



返事は短かったが、声は少し柔らかかった。



「ありがとう。」



その一言には、素直な気持ちが混じっていた。



大丈夫だと言い続けることも、

笑ってごまかすこともできる。



でも本当は、

「無理しなくていい」と言われるだけで、

こんなにも呼吸がしやすくなるのだと気づいてしまった。



そのやり取りを見ていたスングァンが、

テレビから顔を上げる。



「二人で何してるの?」



スニョンは笑った。



「ストレッチ!」



「一緒にやる?」



スングァンは立ち上がる。



「やる!」



「最近運動不足なんだよ。」



チェリンも笑う。



「私もやろうかな。」



ジョンハンが本を閉じる。



「じゃあ少しだけ。」



ウォヌもマグカップを置く。



「身体伸ばしたかった。」



ミンギュが笑う。



「全員参加?」



スンチョルも立ち上がった。



「せっかくだし。」



ユナとソヨンも笑いながらラグへ集まってくる。



「狭い(笑)」



「詰めて詰めて。」



11人が円になるように座る。



スニョンが先生役になった。



「はい。」



「まず肩回しまーす。」



「はい先生!」



スングァンのふざけた返事に、笑い声が広がる。



その輪の中で、さっきまで胸に残っていた重さが少しずつほどけていく。



仕事も、疲れも、秘密も、

ここでは少しだけ軽くなる気がした。



「次、前屈。」



「いっ……。」



スングァンが顔をしかめる。



「硬っ!」



チェリンが吹き出す。



「全然届いてない(笑)」



「無理!」



「足が短い!」



「違うでしょ(笑)」



リビングは笑いに包まれた。



ミンギュも笑いながら身体を伸ばし、

チアキはその様子を見て声を上げて笑う。



その笑い声を聞いた瞬間、

スニョンはふっと息をついた。



無理に強くいなくてもいい。



平気なふりを続けなくてもいい。



この空気の中なら、受け止めてもらえる気がした。



輪の中心にいるわけではない。



それでも、ちゃんと居場所がある。



そう思えたことが、何よりありがたかった。



今日一日抱えていた不安も、

少しだけ軽くなっている。



誰にも秘密は話していない。



それでも、同じ時間を過ごすだけで救われる夜がある。



チアキの「無理はしないでね」は、

ただの気遣いではなかった。



自分を見てくれている、

という確かな温度があった。



その温度に触れて、

スニョンは張りつめていた心が少し緩むのを感じていた。



【STAFF NOTE】



寄り添うことは、

特別な言葉だけではない。



一緒に笑うこと。



一緒に身体を伸ばすこと。



何気ない時間を共有すること。



その積み重ねが、

「一人じゃない」という安心を育てていく。



共同生活43日目。



誰にも知られていない秘密はある。



それでも404 HOUSEには、

その秘密ごと受け止めてくれる空気が、

少しずつ生まれていた。



次回 Scene6【UNSEEN】

『スタッフ日誌』



「誰よりも笑う人ほど、

誰よりも不安を隠しているのかもしれない。」



スタッフだけが知る、

スニョンの静かな本音。




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