ROOM 404 ― 恋愛禁止の家で、秘密と恋が始まる ―

Episode44

『支えるということ』

― 優しさは、大きな言葉じゃなくていい。―

Day:Tuesday(共同生活44日目)



Scene1

『少し遅い朝』

Tuesday|08:30 AM



404 HOUSE。



朝。



窓から差し込む柔らかな光。



キッチンではトースターの音が鳴り、

コーヒーの香りが家の中へゆっくり広がっていく。



共同生活44日目。



いつもの朝。



でも、

もう「いつもの朝」が、

みんなにとって特別な時間になっていた。



Kitchen



スニョンはパンを口にくわえたまま、

リビングへ現れる。



「おはよー。」



眠そうなのに、

いつもの笑顔。



「朝から元気だね。」



スングァンが笑う。



「朝だけはね。」



「昼にはもう電池切れかも(笑)。」



リビングに笑い声が広がる。



昨日までと変わらない、

明るいスニョン。



その笑顔の裏側を、

視聴者だけが知っている。



膝への不安。



踊れなくなるかもしれない恐怖。



それでも、

今日も一番最初に笑う。



Dining Room



チアキは制服姿で席を立つ。



バッグを肩へ掛け、

テーブルを見回す。



「じゃあ、行ってきます。」



自然に出た言葉。



「行ってらっしゃい。」



「気をつけてね。」



声が重なる。



スニョンも、

大きく手を振る。



「今日もファイト!」



チアキは笑って頷く。



「うん、行ってくる。」



以前なら、

「ありがとうございます。」

と返していた。



でも今は。



「うん。」



その一言が、

ごく自然に出るようになっていた。



Entrance



玄関では、

すでにミンギュの靴がない。



スングァンが気づく。



「あれ、ミンギュは?」



「もう出たよ。」



スンチョルが時計を見る。



「今日は朝一で会議って言ってた。」



チアキも思い出したように頷く。



「そういえば、昨日そんなこと言ってたね。」



少しだけ寂しいような、

でも仕事だから仕方ないという気持ち。



そんな表情を一瞬だけ浮かべる。



その時。



「チアキ。」



後ろから声がする。



ウォヌだった。



車のキーを手にしている。



「今日は空港まで送るよ。」



チアキは目を丸くする。



「え?」



「でも、お休みですよね?」



ウォヌは静かに頷く。



「うん。」



「だから送れる。」



「昨日ミンギュから聞いてた。」



「今日は早く出たから、代わりにって。」



チアキは少し驚いて、

それから柔らかく笑った。



「……ありがとうございます。」



ウォヌは小さく笑う。



「行こうか。」



Car



朝の道路。



平日の交通量。



車内には穏やかな音楽が流れている。



ウォヌが運転席。



チアキが助手席。



少し静かな時間。



でも、

その沈黙は居心地が悪くない。



チアキはシートベルトを締めながら、

ふと横顔を盗み見る。



ハンドルを握るウォヌの手は落ち着いていて、

視線はまっすぐ前を向いている。



その横顔を見ているだけで、

胸の奥が少しだけ落ち着く気がした。



こんなふうに、

何も言わなくても隣にいてくれる人がいる。



それが思っていた以上に、

心強い。



ウォヌもまた、

信号待ちのたびにほんの少しだけチアキへ視線を向けていた。



助手席で小さく息をつく姿。



まだ少し眠そうな目。



それでも、どこか安心したように窓の外を見ている。



その様子を見ていると、

送るという行為がただの移動ではなく、

彼女の朝を少し軽くすることなのだとわかる。



それが、

思った以上に嬉しかった。



「眠い?」



ウォヌが尋ねる。



チアキは笑う。



「少し。」



「昨日、ちょっと夜更かししちゃって。」



「映画でも見てた?」



「うん。」



二人で少し笑う。



その笑い方が、

以前よりずっと自然になっていることに、

チアキは気づく。



ウォヌの前でなら、

無理に背筋を伸ばさなくてもいい。



そう思える自分がいることに、

少しだけ驚いていた。



信号待ち。



ウォヌが何気なく言う。



「最近。」



「朝送る人が毎日違うね。」



チアキも笑う。



「ほんとですね。」



「贅沢だなあ。」



言いながらも、

胸の奥では別のことを考えていた。



誰かに送ってもらうことが、

こんなにも当たり前みたいに感じられるなんて。



それはきっと、

この家で過ごす時間が増えたからだけじゃない。



隣にいる人が、

安心していい相手だと少しずつ思えるようになったからだ。



ウォヌは前を見たまま、

穏やかに答える。



「贅沢じゃないよ。」



「みんな、送りたいだけだから。」



その言葉に、

チアキは窓の外を見る。



流れていく街並み。



朝の光。



「……嬉しいな。」



小さな独り言。



でも、

ウォヌにはちゃんと聞こえていた。



その一言が、

思っていた以上に胸に残る。



彼女が誰かの優しさを、

ちゃんと嬉しいと受け取ってくれること。



それだけで、

送ってよかったと思えた。



「よかった。」



短い返事。



それだけで十分だった。



空港が見えてくる。



ウォヌは車をゆっくり停める。



チアキはシートベルトを外し、

笑顔で振り向く。



「ありがとう。」



「助かった。」



自然なタメ口。



その言葉に、

ウォヌは少しだけ目を細める。



最初はまだ遠慮が混じっていた声が、

今はこんなにもまっすぐ届く。



それが嬉しくて、

少しだけ照れくさくもあった。



「うん。」



「行ってらっしゃい。」



「行ってきます。」



チアキは車を降りる。



建物へ向かう背中を、

ウォヌは静かに見送った。



その表情は、

いつもより少しだけ柔らかかった。



【STAFF NOTE】



誰かを送ること。



「行ってらっしゃい」と言うこと。



その一つひとつは、

特別な出来事ではない。



でも。



その役目を自然に引き継ぐ人がいる。



その優しさを、

素直に受け取れる人がいる。



共同生活44日目。



404 HOUSEでは、

「支えること」が特別ではなく、

日常になり始めていた。



次回 Scene2

『頑張りすぎる人』



仕事を終えたスニョン。



誰も見ていない場所で、

そっと膝に手を添える。



笑顔の裏側を、

スタッフカメラだけが静かに見つめていた。




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