【act.08 MINGYU】
SG「…ねぇ。」
MG「…ん?」
助手席に座ったスングァニが力なく俺に話しかける。
SG「ヒョンは、何で辛いのに毎日ヌナに会いに行くの?」
あの日から、俺は毎日なまえの病室に通ってる。
最初は早く俺のこと、俺らのこと思い出して欲しいって、そんな希望を持ってた。
だけど、なまえは思い出すどころか、自分がSEVENTEENだと言う事実を否定しているようだった。
それでも会いに行かないいけないと思った。
あの日守れなかった罪悪感もある。
だけど、それだけじゃない。
また一緒に笑い合ってバカやりたいから。
また笑って「ミンギュ!」って呼んで欲しいから…。
SG「…ごめっ…」
MG「…なまえってさ、くっそ人見知りじゃん?俺らとだって仲良くなるの大変だったじゃん?」
SG「…うん。」
MG「あんなに人見知りのやつ放っておけないじゃん。俺らにしか…懐かないんだから。」
誰とも馴染めなくて、誰にも馴染まなくて、それでもダンスと歌は本当に誰よりも一生懸命で、そんななまえと仲良くなりたくて、俺ら皆んなでなまえと仲良くなろう作戦とか訳分からない作戦立ててたっけ…。
MG「また、仲良くなろう作戦立てないと。」
今すぐにでも泣き出しそうなスングァニにそう言うと、スングァニはようやく少し笑ってから頷いてくれた。
なまえが好きなカフェでドリンクを買って病室に向かう。
何回来てもやっぱりこの場所は嫌だ。
ドアを開けたら、「ミンギュ!遅いよー!早く来て!」って笑ってくれないかなって毎回思ってしまうんだ。
病室から話し声が聞こえる。
ジアヌナもいつもなまえのお見舞いに来てるからジアヌナなのは分かってる。
ノックをしようと拳を握った瞬間だった。
「…私はSEVENTEENで辛かったのでしょうか?幸せではなかったのでしょうか?」
…なまえ?
何で、なんでそんな事聞くんだよ…。
「私SEVENTEENの映像見てて思ったんです。」
『…何を?』
…やめろ。それ以上言わないでくれ…。
「…私はSEVENTEENに必要ないなって……。」
SG「…ヌナ……」
泣き崩れてしまいそうなスングァニを支える。
俺も崩れてしまいそうだ。
必要ないなんて、言わないでよ…。
「…ずっと私が皆んなの足を引っ張ってたんです。いつもメンバーに迷惑かけて…、私が居なければアンチなんて存在しないし、彼らももっと上を目指せると思うんです。」
迷惑だなんて誰も思ってない…。
だからもうそれ以上…
「記憶が無くなったのは、神様からのお告げなんじゃないかなって。お前はSEVENTEENに要らな…」
考えるより体が先に動いてた。
驚いた表情で顔を上げたなまえは、俺とスングァニに気付くと凄く悲しそうに微笑んだ。
SG「…ヌナ……」
泣きながらなまえに駆け寄り、そっと手を取り泣き崩れるスングァニに、なまえは少し戸惑いながらも優しく頭を撫でた。
その姿は、俺のよく知っているなまえの姿。
ヌナしてる時のなまえの姿。
『私、外にいるね。』
気を利かせて出て行ったジアヌナに頭を下げて、俺もなまえにゆっくりと近付く。
「ごめん、もう泣かないで?私、またスングァン君のこと泣かしちゃったね、ごめんね。」
SG「…ヌナ……ヌナが必要無いとか言うから…。」
「ごめんね…。」
思い出したのか?って一瞬勘違いしそうになるくらい、今のなまえはマンネラインに見せるヌナをしてる時のなまえだ。
MG「…なまえ。」
ベッド横の椅子に腰掛けながら名前を呼ぶと、少し怯えたように顔を上げた。
MG「…なまえは…、自分がSEVENTEENに必要ないって、本気で思ってんの?」
「…分かんない。ただね、映像を見ても実感が湧かないの。本当に私はそこにいたのかなって。それに、本当に私は必要な存在だったのかなって…。」
俺らの思いは、何も伝わってなかったんだろうか。
いや、記憶がないから仕方がないのか?
それでも俺はどこかで思ってた。
俺らの温もりに触れれば思い出してくれるかもって…。
また前みたいに一緒に笑いながらSEVENTEENとして活動していくんだって。
そう当たり前に思ってた。
でもそんなのは映画やドラマ内でだけ起こる奇跡で、現実には起こらないのか?
MG「必要って言ったら戻って来てくれるの?」
「…え。」
MG「俺らにはなまえが必要だよ。」
「…ミンギュくん。」
“ミンギュくん”か…。
MG「…お前さ、自分のファンのこと考えてる?今だってお前の無事を願って待ってるファンがいっぱいいるんだよ。SEVENTEENのカウルを待ってるファンが。それでも自分が必要ないと本気で思うの?」
マネヒョンがこの前持って来た事務所に届いたなまえへのファンレターは、まだ開かれてないようだった。その中の一枚を適当に選んでなまえに渡す。
MG「読んで。」
「…え、でも。」
MG「いいから。じゃあ俺が読む。」
なかなか受け取ろうとしないなまえに少しだけ苛立ちながら、手紙を開く。
MG「“カウル、ごめんね。私達カラットが沢山居たのにカウルのこと守ってあげれなくて。怖かったよね、痛かったよね。もう嫌になっちゃった?でもね、私達カラットはまたカウルに会いたいよ。SEVENTEENのカウルに!だからゆっくりでいいからまた私達カラットに会いに来て欲しい。私達はカウルオンニのことずっとずっと待ってるよ!”」
俯いたままのなまえに俺は手紙を読み続けた。
そのどれもがなまえを心配して、なまえに謝罪し、そして、なまえを待ってると言うものだった。
「…ミンギュくん、わたし…」
顔を上げたなまえは泣いていた。
そっとなまえの涙を拭う。
そうだ、なまえは泣き虫だった。
MG「なまえ…。あの日、俺が1番近くに居たのに、守れなかった。守れなくてごめん。本当にごめん…。怖い思いさせてごめん。」
ずっと言いたくても言えなかった。
お前のせいだって責められるのが怖くて。
カラットのせいじゃない。全部俺のせい。
俺がなまえから目を離したからだ。
MG「なまえに怪我させた犯人、俺のファンだったんだよ…。俺がなまえから目を離さなかったなまえを守れたのに…、俺が刺されてたら良かったんだ…。何でなまえなんだよ…、俺が…」
「ミンギュ!」
MG「…え」
“ミンギュくん”ではなく、今確実になまえは俺のことを“ミンギュ”と呼んだ。
さっきまで泣いてたはずのなまえは、今度は怒ったように俺を見上げてる。
「俺が刺されてたら良かったなんて言わないで。ミンギュのせいじゃないよ。逆に、ミンギュやスングァナに怪我が無くて本当に良かった。」
そう言って微笑むなまえは、俺がよく知るなまえの優しい笑顔だった。
MG「じゃあ自分を必要ないなんて言うなよ!俺らにとっても、カラットにとってもなまえは必要なんだよ!」
SG「そうだよ!僕はヌナが居ないとヤダよ!だから戻って来てよ…。お願いだよ…。」
なまえの手を握ったまま、再び泣き出したスングァナの頭を優しく撫で、なまえは少し困ったように笑うだけで、肯定も否定もしなかった。
MG「じゃあまた明日。」
SG「僕も来るね!」
「うん。ありがとう。」
病室を出て駐車場まで戻る。
SG「ヌナ…、戻って来てくれるよね?」
車に乗った瞬間、涙が溢れそうになるのを必死で堪えながらコクリと頷いた。
大丈夫、戻って来ると、信じてるよ、なまえ…。
→
ノベルに戻る I
Addict