またスングァンくんを泣かせてしまった。
またミンギュくんに悲しい顔をさせてしまった。

記憶は無いのに、彼らが悲しい顔をするとなぜかぎゅっと心臓が締め付けられるのは、やっぱり私がSEVENTEENだったからなんだろう。

それでも記憶が戻る気配はない。
私は本当に幸せだったのだろか…。

ミンギュくんとスングァンくんが出て行った後、ミンギュくんが開いていったファンからの手紙が目に入った。

ファンからの手紙だとドンジェさんが持って来てくれたけど、今の私が読んじゃいけない気がしてずっと開かずにいた。

恐る恐る手紙に手を伸ばす。
そこにはカラットと呼ばれるファンの子の可愛らしい文字と、私とSEVENTEENの皆さんが笑ってる写真が貼られていた。

…こんないい顔で笑ってたんだ私…。

正直私は人当たりがいい方じゃない。
極度の人見知りだし、どちらかと言えば1人でのんびりする方が好きだ。

だから日本にいた時も殆ど1人だった。
笑ってる写真なんて1枚も無かった。

それなのに、こんなに笑ってるんだ…。
恐る恐るまだ開かれて居ない手紙に手を伸ばす。

暖かい言葉と後悔の言葉、そして謝罪の言葉がどの手紙にも書かれてた。
中には涙で滲んだような手紙もあった。

夢中で手紙を読みあさった。
段ボールの底にはアルバムのようなものがあった。

その写真の中の私は、どれもキラキラと輝いていて、どれも幸せそうだった。
まるで自分じゃないみたい…。

「アキヌナの写真じゃん。」

…え?
頭上から声がして顔をあげると、ウォヌさんがアルバルを覗いていた。

「ウォヌさん!」
WN「ビックリさせてごめん。声掛けたんだけどなまえアルバムに夢中だったから。」

凄い近くに居たのに気付かなかった…。

「いえ、私こそ…気付かなくてごめんなさい。」
WN「大丈夫。それにしてもいい写真だよな。このなまえめっちゃ綺麗。」

開かれたアルバムを見ながらウォヌさんが呟く。

「やっぱりプロの方が撮ると違いますね。」
WN「え?あ、これプロが撮ったんじゃないよ。マスターって言ってなまえのファンの子が撮ったんだよ。」

へー、ファンの子がねぇ…。
え!?

「え!?ファンの方が!?これを!?」
WN「あはは!そうだよ!確かアキヌナはデビュー前からのなまえのファンなんだよ。ちょっと待ってね。」

ウォヌさんはそう言うと、パソコンをいじり始める。
何してるんだろう…、てか何で私のパソコンのパスワード知ってるんだろう…。

WN「あった、これ、アキヌナが経営してるなまえのファンサイト。ほら、これとかデビュー前のセブプロの時の写真。」

そう言って表示された写真には、まだ少し幼い私が映っていた。
デビュー前って事は8年以上も私のファンってこと?

WN「うわ、俺も若いけどなまえとウジ赤ちゃんじゃん。」

さっきの写真とは違う、写真を見ながらウォヌさんが楽しそうに笑う。

「赤ちゃんではないです。」
WN「いや、赤ちゃんだったよ。なまえは誰よりも手のかかる子だったからね、人見知りで。」

…いや、それは私はめちゃくちゃ人見知りだし、なんなら今もそうだけど…。

「オヌおっぱもめっちゃ人見知りだったじゃん!怖かったもん!無表情だし!」
WN「なまえよりはマシだっ…え?」
「ん?え?あれ…?」

何だろう、何で今私…。

「あの…、ごめんなさい…。」
WN「いや、謝んないでよ。記憶無くても印象に残ってるくらい俺が人見知りだったってことか。」

そう言って笑うウォヌさん。
今、私はすごく自然にウォヌさんの事をおっぱと呼び、人見知りだったと口にした。

もちろん思い出したわけじゃない、ただ口から出ただけ。
ウォヌさんは楽しそうに私たちの写真を見てる。

「あの…、ウォヌさん。」
WN「ん?喉乾いた?」
「え?いや、そうじゃなくて…。」

どうしたの?と優しく聞いてくるウォヌさんに、私は静かに首を振り何でもないですと伝えた。

ウォヌさんは何か言いかけたけど、そっかとだけ呟き私の頭を優しく撫でただけで、私が何を言おうとしたのか聞いてくることはなかった。

聞けるわけがない。
“私がSEVENTEENを辞めたら、ファンを裏切ることになるのか”なんて。
“私がSEVENTEENを辞めたら、私はまた一人ぼっちになるのか”なんて。

WN「…なまえの人生だから、最後に決めるのはなまえだけど、なまえがどんな決断をしても俺はずっとなまえの味方だし、ずっと友達だよ。それだけは忘れないで。」

エスパーかと思った。
ウォヌさんの言葉に泣きそうになるのをグッと堪えて顔をあげる。

「ありがとうございます。」
WN「まあ正直俺だけじゃなくて、あいつらも全員ずっとなまえの味方だし友達だよ。」

私には13人も友達が出来たんだ…。

WN「そろそろ帰るわ。また来る。」
「はい、ありがとうございました。気を付けて。」
WN「うん。」

ウォヌさんは私の頭を撫でると病室を出て行った。
暫くして先生が病室にやって来た。

『どうだい?何か思い出せそう?』
「いいえ…。ただ、さっき無意識にメンバーのことをおっぱと呼んだんです。それに、昔のことを口にしてたんです。」
『なるほど…。それはデビュー前のことかな?』

デビュー前?
どうなんだろう…、でも確かにさっきほんの一瞬だけ、ウォヌさんが無口で無表情で怖かったなって思った。

「たぶん、デビュー前のことだと思います。」
『なるほどね。なまえさんの記憶喪失は精神的なものだって言ったよね。』
「はい。」
『デビュー前の楽しかった事をなまえさんは無意識に記憶してて、それがふとした瞬間に思い出されたんだと思うんだ。何かきっかけがあったんじゃないかな?』

…きっかけ?
ああ、きっとこのデビュー前の写真だ。
パソコンに映し出されたままの写真に視線を向ける。

『写真や映像は思い出すきっかけにもなるから、ゆっくり見てみるといいよ。』
「…分かりました。」
『じゃあ何かあったらナースコール鳴らしてね。』
「はい。」

入院してから嫌ってほど自分が出てる映像は見た。
ジアさんがいつも見せてくれるから。
それでも何も思い出さなかった。

それなのに何でデビュー前の写真で?
デビュー後の私は、楽しくなかったの?

マスターさんが撮ってくれたデビューしてから最近までの写真を見続けた。

けれど、記憶が戻ることはなかった。




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