翌朝
「清光」
彼の名を呼んで、そっと両手を広げる。
「一晩会えなくて僕がとっても寂しかったので、ぎゅっとしてくれると凄く嬉しい」
「…もー、しょうがないなぁ。俺の主は甘えん坊なんだから」
ぎゅうっ、と僕を抱きしめた清光の動きが、不意に止まった。
「清光?」
「…主から知らない匂いがする」
「あー、多分昨日借りた図書館のシャンプーの匂いだと思う」
お風呂に備え付けてあったやつなので、何処のメーカーとかかは知らない。でも別に変な匂いでは無いと思うけどなぁ。
清光に抱かれたまま、顔の横に落ちて来た髪を摘んでスンスンと匂いを嗅ぐ。
そんな僕の頭に鼻を近づけて、清光は「変な匂いとかでは無いけど…」と眉根を寄せた。
「………なんか、主っぽくない。主にしては上品すぎる」
「おう遠回しに僕が下品だって言った???」
「違うって。主はもうちょっと…こう、清涼感のある匂いの方が俺は好き」
これはちょっと甘ったるすぎる。と、尚もスンスン嗅ぎながら、清光は僕を抱き締める腕に力を込めた。成る程、要するに気に入らねぇと。承知した。
まあ確かに?普段僕が使うのって、あまり甘すぎない感じの香りがするやつだからなぁ。匂いがキツすぎるのは苦手。
頼んでないけど偶に歌仙や源氏が僕の衣服に香を焚いてくれるから、下手に甘ったるいのにすると匂いが混ざって大変なことになるんだよねぇ。
「でもこれ、そんな甘い香りか?一応図書館で男性の文豪先生達が使うやつと同じのだし、そこまで甘すぎるとは思わないんだけど」
「───…………………よし、朝餉食べたらお風呂はいって来なよ」
「エッそこまで嫌??」
「似合ってないってのもあるけど、うん。今わかった。よくわかった。あそこの文士達と似た匂いさせてるから気に入らないんだ」
「うわあいド直球の最速ストレートだな!?」
そりゃ図書館シャンプー借りてるからね?!