1
この世界には、神様がいる。
もちろん、国や人種、地域によっての差はあれど、世界には確かに「神様」がいる。
有名でたくさんの信仰を集めている偉大な神様もいれば、日々の自然の中に宿る、無名の小さな小さな神様まで、きっと数えればきりがない。
私の生まれた国・日本などは、そんな神々を信仰するその最たるものだろう。
八百万信仰、の文字通り、この世界に存在する全てには神々の息吹が宿るという考え方だ。
たとえば、土地。その中にある森や建物、風や水の一滴。人々が造った器具や人形にさえ、魂は宿る。所謂付喪神、九十九の神々だ。だから私たちは、全てのものに感謝をし、大切に大切に物を扱う。
私たちは、この世に在る全ての尊いものによって、生かされているのだと。
さて、話は変わるが、私の家は地元でも有名な神社だ。
もうずっと昔から続いてきた神社で、とある高名な神様を御祀りしている。
きっと、この国に住むものなら誰もが一度は耳にした事があるだろう神様だ。
日本神話―――日本書紀や古事記にも記されるその神様の名は、須佐之男命。
太古の神産みにおいて、伊邪那岐命が黄泉の国から帰った際に禊をした折、生まれたとされる三貴神の一角。八岐大蛇を退治した話が有名な、スサノオノミコト様のことである。
我が家はそんな彼を代々御祀りしてきた由緒正しい(多分)神社なのだ。
そしてそんな神社の跡取り娘として生まれた私の朝は、禊を終え身支度を整えた後、神様への御参りから始まる。
御手洗でお清めをし、拝殿前へ進んでがらんがらん、鈴を鳴らして二礼二拍一礼。誠心誠意心をこめて、御参りをしましょう。
……まあ。
「おーい夏乃!百円見つけたぞ百円!」
向いている方向にその神様がいらっしゃらないことも、割とよくあるんですけどもね。
戻る