・生理ネタなど含まれてます注意!
・アンケートでのコメントを参考に色々詰め込んだので長いです
・書ききれない物もありましたすみません!



@無自覚バカップル inお部屋
「…あれ、花礫くん銃のメンテ?」
「ああ。結構サボってたから、時間あるうちにやってやんねーと」
「そっか(真剣な顔……ここでふざけて「私のメンテもお願いします」とか言ったら、何かしら飛んできそうだな)」
「…」
「…」
「……」
「…(さっきあっという間に本読み終わっちゃったから退屈が…! でも花礫くんの邪魔したら確実に怒られるしなぁ。そこまで命知らずではない…はず)」
「…」
「(…無言がつらい。いや、いつものことだけどせめてコッチ向いてほしい。だけど我儘なんて…!)」
「(…視線が突き刺さんだけど)」
「(背中……背中なら、)」
「──っ!? ……オイ、なにしてんだ」
「背中にくっついてます」
「ウザイ。暑苦しい離れろ」
「うっ! じゃ、邪魔はしない! これ以上何もしないからっ、だから、その、このままで居させてくださいお願いします…」
「却下」
「つれないこと言わずにぃぃい」
「無理なもんは無理だっつの! そうされるとホントに邪魔なんだよ!」
「…そか、分かった離れる…(しゅん)」
「…」
「…」
「…おい」
「…」
「(……っああもう、めんどくせーな!)…好きにしろよ、ったく…」
「! うん好きにします!(ぴとっ)」
「…」
「…」
「(…花礫くんの背中あったか)」
「(…なんだコイツくそかわ)」


@女の子の特権?
キリキリと下腹部を数多もの細い針で突っつかれているような刺激。あまつさえ時折子宮が何かに握られているかのように重い疼痛が襲ってきて、名前は少しでも辛さを和らげようと寝台の上で丸くなった。しかしどう足掻こうとも鈍い痛みからは解放されない。自分が女である限り経験する致し方ない苦しみなのだが、それでもこの苦痛を味わう時ばかりは、女は全くもって理不尽だなと大概当て付けのように思ってしまう。暫しそうして痛みに耐えていると、不意に寝台のスプリングが軋む音を奏でた。生憎と寝返りを打つ気力は無かったから目線だけで相手を窺えば、微妙に滲んだ汗で額に張りつく前髪を避けられる。遠慮がちに触れる指先は労るようで、優しくて。少し体温の低いそれが心地良くて、名前はゆっくり瞳を綴じた。

「……薬はもう飲んだのか?」
「んー……喰から貰ったのを一応……」

でも直ぐに効果が出るわけじゃないからね。心なしか普段より青褪めた表情で苦笑いする名前を見て、花礫は眉を顰めた。こんな時まで自分に無用な心配を掛けまいと振る舞う彼女にひどく腹が立った。確かに毎月あることだし、男である自分はどうすることも出来ないが、名前の辛さの捌け口くらいにはなってやれるのに。
素直に甘えてこない彼女がもどかしくて、何もしてやれずただこうして傍にいることしか出来ない自分が無力に感じて。ごちゃごちゃと混線した思考を振り払うように、おもむろに下腹部に添えられた名前の手の上に己の掌を重ねた。

「……ふふ、役得かなー。花礫くんのそんな思い詰めた表情が見られるなんて」
「…バカじゃねーの、思い詰めてねぇし」
「いつか花礫くんの赤ちゃんを産むために頑張って乗り越えるからね!」
「なっ、だからテメェはそういうことを恥ずかしげもなくサラッと言ってんな!」

あれ? でもそんな未来の可能性に否定はしないんだ。顔を真っ赤にして文句を捲し立てつつも、重ねられた手は決して名前の下腹部から動かない。何だかんだ言ってもほら、やっぱり優しいじゃない。


@遠征任務なのです
「うああ寂しいよう片時も離れたくないよう花礫くんと一緒にいたいよう」
「イイ歳して駄々捏ねてんなよ」
「ちょっ、女性に年齢のことはタブーなんだよ花礫くん!」
「知・る・か・! いい加減いつまでもくっついてんじゃねェよ鬱陶しい!! 喰コイツ連れてけ!」
「言われなくても。ほら名前行くよ」
「うっ、うう、花礫くん待っててね、浮気しちゃダメだからね!」
「するかアホ! とっとと行け!」


・遠征任務一日目
「あー清々した」
「…ねえ花礫くん、名前がいなくて寂しくないの?」
「ハ? むしろ束の間の自由を満喫してるとこだけど」
「そ、そっか…(名前報われない…)」


・遠征任務二日目
「名前、仕事終わったみたい」
「げ。じゃあもしかして、アイツら帰ってくんのか」
「ううん、それはまだ。なんでも今回護衛したお屋敷のパーティに誘われたらしくて、それに喰君と参加してくるって」
「……あら? そういえばそこの屋敷の馬鹿息子が名前のことをお気に召したって情報が耳に入ったけど」
「っ!?」
「もしかしたらそのまま……なんてこともあり得るかもねぇ」
「イ、イヴァさんがこわい……」
「うわ、姐さん悪い顔……」
「お黙り无と與儀」


・遠征任務三日目
「(おいもう仕事終わったんだろ、なんでさっさと帰ってこねーんだよ。また甘いもんにでも釣られてんのか? あれっだけ耳にタコが出来んじゃねぇのってくらい言い聞かせたよな。忘れたとは言わせねーぞ絶対言わさねェからな。浮気すんなとか俺に言っときながら自分がしてたら世話ねぇじゃねえか。そもそもあんなヤツ気に入るとかその息子も相当な物好きだな、名前引き留めたってどうするつもりだよ)」
「(まさか本当にこのまま帰ってこないなんてこと…ねぇよな)」
「……早くその能天気なツラ見せろ、バカ女」


・遠征任務四日目
「な、なんか息苦しくない?」
「間違いなくアレが原因よ」
「…ひっ! が、花礫くん?」
「…………」
「(醸し出される話しかけんなオーラ…!! というか貧乏揺すり激しっ!)」
「もう、イヴァが花礫君の不安煽るようなこと言うから……」
「不安が苛々に変わってるわね…普段素っ気なくされてる名前の代わりに仕返ししてやったのよ。まあ面白半分だけど」
「それが本音だよね!? 明らかに花礫くんの反応見て楽しんでるよね!?」
「っちょっと声デカいわよ、花礫に聞こえるでしょうが!」
「(……とっくに聞こえてるっつうの。どーでもいいけどまだ帰ってこねぇのかあいつ)」


・五日目そしてお待ちかねの!
「ただいまー! お土産あるよー!」
「わーい!」
「无くんには羊と兎のぬいぐるみ、ツクモにはカップケーキ詰め合わせ、姐さんには新発売の香水ね」
「名前っ、俺には俺には!?」
「タコの壺漬け」
「どゆこと!!?」
「……オイ、名前」
「あ、花礫くんもただいま! 花礫くんへのお土産はねー……」
「ンなもん後でいいからこっち来い」
「え? ちょっ……花礫くん!?」
「……あーあ、あれは当分戻ってこないわね」
「花礫君のことだから、素直に心配だったなんて言えないだろうし…」
「その分、行動で分からせるって? 男ってつくづくめんどくさいわねぇ」
「……俺、初めて女の人が怖いって思った」
「イヴァさんに到っては今さらだよ與儀君」


@その後のお二人
私の部屋に連れられて、鍵を閉められて。
二人きりになった途端、身を包んだ温もりに思わず瞳を大きく見開く。
目の前の胸から聞こえてくる鼓動は急ぎ足で進んできたからかほんの僅かに早く、私を抱き締める腕も離す気はないとばかりに徐々に強められていった。

「……あー、やっぱ……」
「……?」
「……イヤ、なんでもない(安心する、なんて口が裂けても言わねぇ)」

濁された口からは心配したとか寂しかったとか、望んだ言葉が出てくることはなかったけれど。おかえり。やがてそうポツリと落とされた言葉に笑みを溢して、花礫くんの首もとに頬を寄せた。ただいま。私の帰る場所は、いつだってあなたの腕の中。
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