*少しお下品に感じるような部分あり


@二人の距離(物理)
「あれ、花礫携帯鳴ってるよ?」
「あ? …チッ、めんどくせーけど出ねぇともっと面倒か……もしもし」
『花礫くぅぅん!! なんでメールも電話も返してくれな(ピッ)』
「え、ちょっ、今の声名前さんでしょ? 途中で切っちゃっていいの!?」
「いーんだよ。ったく、これだから出るの億劫だったんだよあのバカ女…って、」
「…また鳴ってるね」
「〜〜だぁっ、何なんだよとっとと用件だけ言え!」
『久し振りに話した恋人に対する発言がそれって! もっと甘い言葉とか囁いてくれたっていいのにー!』
「俺にンな芸当出来るとでも思ってんのかふざけんな! 話はそれだけなら切んぞ!」
『わああああ待っ…(ブツッ)』
「あっ、こら花礫ってば! なんでホントにまた切っちゃうの!」
「ツバメはあいつのしつこさを知らねーから言えんだよ。無駄に話は長ェわ纏まりもねぇわで、聞いててかなり疲れんだっつうの」
「もーほんっと女心分かってないんだからこいつ! 名前さん、寂しかったんじゃないのかな…」
「そもそも男なんだから女の心とか分かるワケねぇだろうが! 大した用事も無いくせに、與儀共どもしょっちゅうメールとかしてくるしウゼェんだよ」
「…そんなこと言いつつ、メール来たら楽しそうに笑ってるくせに」
「なんか言ったか」
「べっつにー!」
(…ひょっとしたらこれって花礫の弱味を握れるチャンスじゃない? そうだ、ちょっとイタズラしてやろっと)


@ツバメちゃんの思惑
『そっかぁ…やっぱり花礫くんの迷惑になっちゃってたかぁ』
「いやいや、そんなことないと思います! ただ花礫は素直じゃないっていうか、憎まれ口を叩くだけで、名前さんからメール来た時なんか特にほっぺが弛んでるんですから」
『ふふ、ほんとに? でも自分でもやり過ぎかなぁって反省してたところだし…メールの頻度少し控えようかな…』
「そこで、ですね名前さん。私に良い案があるんです!」
『うん?』
「押してダメなら引いてみろ、ですよ!」
『わあ過去に聞いたことのある作戦だなあ。嫌な予感しかしないよツバメちゃん!』
「名前さんが前に何度かこの作戦を試して、ことごとく花礫に看破されたのはあらかじめ朔さんから聞いて知ってます! でも今回は離れてるしきっと大丈夫ですよ!」
『朔さんツバメちゃんに何てこと教えてくれてんだ。…うーん…作戦内容は?』
「(よしっきた!)それはですね…」


@煽ります煽ります
「(おかしい…もう二週間だぞ…)」
「あっれぇ、花礫どうしたの? そんなに熱心に携帯なんか見つめちゃって」
「! なんだお前か…別に意味なんてない」
「本当かなー? 名前さんからの連絡待ってたりとかじゃないの?」
「ハッ、俺が? 冗談。むしろ静かで清々してるっつーの!」
「ふうん…名前さんってほら明るいし可愛いしで素敵な人だから、今ごろ他の人に迫られてたりしてねー」
「(…思い当たる節あんのがムカつく)仮にそうだったとしても何か起こるなんて事はあり得ねーだろ、あいつ俺以外眼中にねえし」
「分かんないよ? 花礫なんかよりもーっと優しくてかっこよくて、でも素直で紳士的な人に言い寄られたら…名前さんだってコロッと落ちちゃうかも!(名前さんに限ってそんなこと無いと思うけど…ん?)」
「ンなわけ、…」
「(えっ、少なからず効果アリ!? やった名前さんっ、作戦は順調に進行してますこの調子です!)」


@だって男の子だもん
「(チクショウ、何でよりにもよってこういう時にあんな夢見んだよ。余計声聴きたくなったじゃねーか馬鹿野郎)」
「(…しかも微妙に勃ってやがるし。マジあり得ねえ、それもこれもあいつのせいだ)」
「(そもそも夢の中の感触リアル過ぎだろ…匂いも、体温も、息遣いとか全部、)」
「(ガラじゃねえ…ガラじゃねえとは自分でも分かってっけど、本当は声とかメールだけじゃなくて、)」
「…クソ、これだから嫌だったんだよ…」

(電話をすれば会いたくなるから。メールがくれば嫌でも二人が離れてることを実感するから。抱き締めたいキスをしたい。どうしようもなく焦がれて止まない温もりを直ぐそばで感じられないことが、酷くもどかしくて)


@ついうっかり
「(うーん…花礫もなかなか粘るなぁ。名前さんからの連絡が途絶えて早三週間、苛々はしてるみたいだけど、自分から連絡をしようとは思わないのね。もう、変なとこ意地っ張りなんだから)もしかしたら今回の作戦も失敗に終わっちゃうかな…すみません名前さん…」
「──作戦、ねえ」
「っ、花礫!?」
「……洗いざらい、その話詳しく聞かせてもらおうか」


@で、結局こうなるのね
「事情はツバメから訊いた。またンなくだらねーこと仕出かしやがって」
『アハハ…返す言葉もないです。まあ今回電話出来なかったのは、作戦云々じゃなくて仕事がごたついてたっていうか、』
「…そう、か」
『うん』
「…」
『…』
「…名前、」
『…ん?』
「俺、早くおまえに追い付くから。強くなって、もう何も手放さねえように、だから」
『…うん』
「待ってろ。…絶対、直ぐに帰る」
『うん、待ってる。…でもあんまり遅いと、待ちくたびれて花礫くんの居場所埋めちゃうんだからね』
「ほざいてろ。そんなことになってもどうせまた俺に戻るクセに」
『む、ごもっともなのが悔しい。…っと、そろそろ仕事に集中しないと。花礫くんもこれから授業でしょ?』
「ああ」
『頑張ってね。…それじゃ、』
「名前!」
『?』
「…これからは、二日に一度は連絡しろよ。どんなに忙しくても、夜遅くてもいいから」
『………ウザいんじゃなかったの?』
「許すって言ってんだよ良いから四の五の言わずに頷きやがれ!」
『ちょっ、なんで!? 分かりましたよもう!』
「…っとに、」

(本人にはとても言えないけど、名前さんと話す花礫の顔はすごく穏やかで、優しくて。ああ、他に帰りたいと思える、安らげる場所を見つけられたんだなぁって思ったら安心して、…ほんのちょっとだけ、寂しかった)



・ほんとはツバメちゃんに無意識にのろける花礫くんとか書きたかったんですが、非公開にするのも勿体なかったので此方もアップ。

ALICE+