男の娘な従兄弟と同居する松田陣平の話

 社会人になると生活リズムの違いだったり興味関心の差が大きくなって行くからか、遊ぶ相手もだんだんお決まりのパターンになってくる。特に、平日にオフがある職業なんてのはそう多くないので、誰かと予定を合わせて出掛けること自体が目に見えて減ってしまった。最近は誰と遊んだかなあ。大体思い浮かぶのは同僚だけど、わざわざオフの日に遊ぶというよりは業後に行く飯くらい。こうして社会人は仕事に殺され、枯れていくんだろうなあ。え、このままじゃヤバくない?友達も居ない彼女も居ない、働くだけ働いて、退職後とかどうなっちゃうわけ?ひえ…働く社会人の闇よ…。神様、ボクは良い子に一般市民の平和と安寧を守るため日々働いています。どうか、可愛い女の子をお恵みください。そうそう、丁度目の前を歩いているあんな可愛い子たちなんかもの凄くタイプです。なんて、視界に入った女の子たちを自然と目で追ってしまう。

 はあ〜〜なんかやたら目立つ2人組だなあ。2人とも背がすらっと高くて、手足が細長い。1人はクール系で、アッシュグレーのミディアムボブは外ハネの無造作スタイル。サングラスで目元が見えないから、外人さんっぽくも感じる。もう1人は可愛い系で、ゆるふわなクセのついた胸までの艶やかな髪。2人は流行りのお揃いコーデというやつなのか、ネイビーのハイウエストパンツに体のラインに合った白いTシャツというシンプルながら初夏の陽気にぴったりの涼しげな装いだ。クール系な子もビシッと決まってるけど、可愛い系の子は渋い皮素材の大きなサッチェルバッグを学生鞄みたいに背負っていて、可愛さがより引き立てられている。やたらと大人っぽく見える2人だけど、平日の昼時にぶらぶらしている所を見ると大学生?と首を傾げた。それにしても、あの可愛い系の子はどこかで見たことあるんだよなあ。ものすごーく既視感がある。なんて思っていたら、大きなサングラスを掛けたクールな子がこちらを見た。徐に柳眉がくっと寄せられる。あれ、これもしかして不審者扱いされてる?ち、違います〜〜お兄さんは一般市民を守る善良なお巡りさんですよ〜〜。怪しい人じゃないですよ〜〜!!と念を込めてへらりと笑ったのに。可愛い子を庇うようにぐいっと肩を抱き寄せだして。こ、これは間違いなく!疑われている!恐らく向けられているであろう訝しげな瞳が、大きなサングラスに隠れているだけまだマシかもしれない。え、どうしよう!?これ、俺、ダメじゃない!?ああ〜〜待って!端末仕舞おう!?ね!?お願いだから!お金ならあげるよ!それは違うね!!

 内心パニックになっていると、不意に可愛い子がこちらを向く。ぱちり、と視線が合ったのは透き通った大きな瞳。色白の肌に、今日は赤が少し濃い小さな唇。

「あれ、萩原さん?」
「ああ〜〜〜〜〜〜〜旭ちゃんだ助かった……!!」

神は俺を!見捨ててなどいなかった!ありがとうございます!そして俺の好みのタイプは旭ちゃんです!今日も可愛いね!堪らずに駆け寄ると、旭ちゃんはにこりと笑っている。こんにちは、偶然ですねなんて。んん〜〜疲れた体に染みる!

「ほんとだねえ、偶然会えるなんてラッキー」
「今日はお休みなんですか?」
「うん、オフでやることないの寂しいから出てきた」
「ふふふ、今日は陣平くんお仕事ですもんね」

からりと笑う旭ちゃんの隣で、クールな女の子が未だ端末を強く握り締めている。少し強い口調で旭、と呼ぶ姿を見れば相当怪しまれているみたいだと苦笑した。

「大丈夫だよ、マナちゃん。この人は警察官なんだよ」
「警察官…?」

眉を寄せながら俺を見る彼女に首を傾げる。苦虫を噛み潰したような表情をされる機会なんてそうないのに。何か、警察官に嫌なイメージでもあるんだろうか。

「そう、陣平くんの同僚の人でね、萩原研二さん」
「初めまして、萩原です」
「この子は、高校の頃からの友人で吉田愛美ちゃんです」
「……吉田です」

サングラスを外した顔はやっぱり美人さん。切れ長の瞳に浮かぶ青が綺麗。よしだまなみちゃん、ね。覚えたよ、と笑ってみても変わらず眉は寄っていたけど。

「……彼氏気取りの従兄弟じゃないなら、良いか」
「ん?なんかそのキーワードめちゃくちゃ知ってるよ!?」

マナちゃん、またそんなこと言ってるの?とくすくす笑って眉を下げる旭ちゃん。今は大学生の旭ちゃんがまだ高校生の頃。同じ爆処に所属するあの男は、既に先日見たような感じだったのかと思うと、どうしたって頭が痛くなってしまう。

「お兄さん、今日はやることないって言いましたよね?」
「え?ああ、うん。これからご飯食べて、適当に時間を潰すだけかなあ」
「そう。なら、旭をお願い出来ませんか?」
「え?」

俺は大丈夫だよお。良いから、お兄さん暇って言ってるんだし。でも…。
なんだろ。事情は良くは分からないけど、押し問答を始めた二人を見下ろして。

「俺が旭ちゃんの傍に居ればオッケー?」
「はい、私はこの後バイトがあって一緒には居られないので」
「なるほど。旭ちゃん一人にしたら風に飛ばされちゃいそうだもんねえ」
「え、萩原さん?」
「あはは、いいよいいよ。俺で良ければ、喜んで」

 吉田さんは随分ほっとした顔をして旭ちゃんの頭をゆっくり撫でた。お兄さんとちゃんとご飯食べてね。帰りは送ってもらうこと。また明日ね。早口で言ったかと思えば、お兄さんよろしくお願いします!と足早に去って行く。ありがとー、と手を振った旭ちゃんと一緒にすらりとした背中を見送りながら、さっきのやり取りに妙な既視感を覚える。深く考えずとも浮かんで来たのは一人しか居なくて。

「なんかさあ、」
「はい?」
「吉田さんって、あれだね。松田と属性が被ってる?」
「あはは、あの二人、同じような事を俺に言うのに、すっごく仲悪いんです」
「だろうねえ」

仲良くしてるの全然想像出来ないなあ。困ったように笑う旭ちゃんの頭を撫でた。

「それじゃあ、まずはご飯食べよっか」
「あの、すみません、こんなことになってしまって」
「ん?いや、全然。言ったでしょ、偶然会えてラッキーって」

デートまで出来ちゃうなんてハッピーだよ。午前中は自堕落に寝て終わったけど、ここから最高のオフになりそうで萩原さんワクワクしてる。そう言うと、ゆるりと笑う顔は本当に可愛い。前も思った気がするけど、これで男の子なんだよ⁉無理だろ〜〜。開きかけた新しい扉は、既にゆるっゆるなんだよなあ〜〜。

「いただきます!」
「いただきまーす」

 一先ず目についたイタリアンのお店へ入ってみたけど、なかなか雰囲気が良い。ぱちんと両手を合わせた旭ちゃんはテーブルに並んだマルゲリータを一切れ手に取って齧り付く。みよん、と伸びるチーズに悪戦苦闘しながら咀嚼してこくりと飲み込んだ。

「美味しい〜〜」
「うんうん、美味しいねえ」

何て言うか、ひたすら可愛いの暴力を受けてる感じ。思わず両手で顔を覆っていると早く食べてみてください、と穏やかな声が飛んでくる。うんうん食べるよお。

「旭ちゃんは本当に可愛いねえ」
「……萩原さん、なんかうちの父に似てきましたね」
「今のは返事と心の声が逆になったんだけど、お父さんもこんな感じなの?」

チーズみよん中だったようで、こくりと首肯される。まあでもこうなっちゃうよねえ。こればっかりは仕方ない。どう考えても俺は悪くない。普段のままでも、女装してても、大きく違うのは髪の長さくらいで表情や仕草は同じだもん。しかも、そのどれをとっても可愛い!!見てるだけでお腹いっぱいになれます。優しい世界が此処にある。なんて思いながら旭ちゃんがおすすめしてくれたクアトロファルマッジを手に取ってひと齧り。初めて食べたけどチーズと蜂蜜って合うんだねえ。これはすっごく美味しい。

「良かった。陣平くんも甘い物は苦手だけど作ると食べてくれるんですよ」
「え?旭ちゃん家でピザ作るの!?」
「陣平くんが食べたいって言うから簡単な物なら作れるようになりました」
「待って。松田羨ましすぎない??」

待って。松田羨ましすぎない??何?料理のリクエストとかしてんの??羨ましすぎない??いやあ、ズルすぎだろ〜〜旭ちゃんが自分のためにご飯作ってくれるだけでも羨ましいのに??くそ〜〜。結局のところ、松田はあの時の宣言通り本当に旭ちゃんと住み始めたらしい。良いなあ、幸せかよ。前回会った時に醜態を晒してばかりだったことを心の底から悔いていた俺は、必死に練習しまくった真顔を保てているはず。きょとりと首を傾げた旭ちゃんが、すぐににこりと笑った。

「萩原さんもうちに遊びに来てくださいね。リクエストがあれば作りますよ」
「絶対行くね!!」

情けないけど、つい脊髄反射で食い気味に答えてしまった。真顔保てなかったわ。無理だった。でもお待ちしていますね、と微笑んでくれる旭ちゃんがいっぱい好き。優しくしてくれてありがとう。日々疲れてる萩原さんの心は秒刻みで回復しています!

「そうだ、今日は学校お休みなの?」
「いえ、今日は午後の授業が休講になってしまったんです」
「そうなんだ?」
「はい、どうしようって思ってたらマナちゃんが付き合ってくれて」
「そっかあ、優しい子なんだね」
「ふふふ、はい。マナちゃんには高1の頃から仲良くしてもらってます」
「それじゃあ長い付き合いなんだねえ」
「そう言われたら、そうですね。気付いたら大学も一緒になってました」

柔らかく目を細める旭ちゃんはきっと昔のことでも思い出しているのだろう。シェアしようねと言って注文したパスタを取り分けると、慌ててお礼を言われて首を振る。

「松田と吉田さんが面識あるってことは、アイツ高校の行事とか行ってた?」
「ええ、陣平くんは俺のどんな行事にも必ず顔を出してくれました」
「高校以前も?」
「ふふ、皆勤賞ですよ」
「うわあ……」
「警察学校時代の頃も、わざわざ外出届を出してくれてたんですよね?」
「ああ……確かに、頑なに理由を教えなかったけど何回か出してたなあ」
「あはは、理由くらい言っても良いのに」

松田のやつ、俺たちに旭ちゃんのこと教えたくなかったんだろうなあ。まあ、俺が松田でも同じことをする自信がある。でもなあ。萩原研二としての人生を歩んでいる今なら、早く教えろよ松田!!って気持ち。あの時、お仕事中で良かった。もしかして俺って意外とツイてるのかもしれない?もぐもぐとパスタを食べながらゆるりと口角を上げているあどけない姿を見ていると、自然と微笑んでしまう。美味しい?と聞けばこくりと小さく頷いて。このお店良かったですねという穏やかな声に頷きながら本当にねえと返した。

「あれから少し経つけど、松田との生活は慣れた?」
「はい、おかげさまで」
「そっかあ、良かったねえ」
「あの時は色々気に掛けていただいてありがとうございました」

わざわざフォークを置いてぺこりと頭を下げる様子に気にしなくて良いよと笑う。他の皆さんもお変わりないですか?と聞かれたら頷きはするけど。あれ以降の同僚たちとのやり取りを思い返してみるけど、何ていうか絡み方が面倒になったんだよなあ。あの日の夜勤組からはやたら紹介しろって言われるし、一緒に出動した奴らは純粋に心配なのかそれとなく色んな話題を振ってくる。松田旭という人物のことは、間違いなくここ直近の爆処の中で最も熱い話題となっていた。

 そういえば、あの日は非番だったはずの松田が物凄い勢いで警視庁を走っている姿を見たという同僚が、何しに来たんだ?って聞いてたなあ。松田は従兄弟を迎えに来たと素っ気なく言ってたし、同僚はなんだつまらんという顔でほーんとか返してた。その従兄弟、お前らが今めっちゃ話題にしてる美少女だからな⁉とは言ってやらない。さっきは松田に対してもっと早く教えろよな!と思ったけど、松田の気持ちが分からないわけでは断じてないから。松田旭が爆発物処理班に所属する松田陣平の従兄弟であることを知っているのは、今のところ俺だけだ。色々な偶然が重なって知り得たことだとは思っている。だけど、その偶然のラッキーを誰かにお裾分けしてやるほど、俺は優しくもなんともない。旭ちゃんと初めましてをしたあの日から2、3日ほどは松田も俺が余計なことを言わないか気を張っていたようだけど。睨まれずとも分かってますよ肩を竦めて苦笑しつつ、俺は松田の従兄弟のことを黙秘し続けている。土下座して頼まれようが何をされようが、絶対誰にも教えてやらない。だからそんな怖い顔しないでよ、松田。2人で飯食った時にそう言うと大きな舌打ちをしてたけど、とりあえず安心はしてくれたみたい。せっかくだから、いっぱい会わせてくれると俺嬉しいなあ〜〜〜と首を傾げてみたもののあまりにも自然に無視された。そりゃそうだよね。今の今まで同期の俺たちにすら隠してたんだもん。まあ、松田がどんなに頑なに口を噤んでも、今俺の目の前にはニコニコ顔の旭ちゃんが居るんだけどね!!
はあ〜〜松田はお仕事。俺は非番。そして旭ちゃんと2人っきり!!最高です!!ご飯を食べ終わったら何処に行こうか?なんて話す。平和だなあ〜。普段の仕事が仕事なだけに、オフって平和を実感出来て良いよね。何ってもう最高です!!

「旭ちゃんは何処か見たいところある?」
「うーん、パッとは思いつかないです」
「そっかあ、せっかくだから荷物持ちでもしようかと思ったんだけど」
「あはは、そういうことは可愛い彼女さんに言ってあげてください」
「えー?旭ちゃんにだって言わなきゃダメでしょ」

萩原さんは悪いお兄さんですねえ、なんて困ったように眉を下げて笑うから。そんなことないよ?と返しつつ手を伸ばし頭を撫でる。まあ、俺もこれといって目的があるわけじゃないしブラブラしよっかと提案して。ピザもパスタも食べ終えておしぼりで小さな口を拭く様子を見ながら頬杖をつくと、そうですねと笑顔付きのお返事。にこり、と浮かぶあどけない笑顔は本当に可愛いんだよなあ。お会計のレジでいいからいいから、まだ学生さんなんだし!とまとめて払ったらプンスコしてたけど、可愛すぎて笑った。なんだあれ。この子、これで男の子なんですよ!?信じられます!?なんて思わず叫びたくなったけど、我慢したから誰か俺を褒めてくれても良いと思うんだ。


***


「お兄ちゃん、お姉ちゃんバイバーイ!」
「バイバイ!」
「本当にありがとうございました……!」
「いえいえ、お気になさらず」

 何度もこちらを振り返って頭を下げる女性と、元気にブンブンと手を振ってくる男の子が対照的で。気をつけてね!と手を振る旭ちゃんの隣で笑ってしまった。

「ブラブラのつもりが、迷子対応になっちゃったねえ」
「そうですね。でも、お母さんと会えて本当に良かったです」

そうだねえ。まあ、元から予定なんて無かったようなものだし。ほわりと笑う旭ちゃんが嬉しそうだから良しとしよう。とりあえず今日の流れを振り返ってみると、こうだ。美味しいお昼を食べたイタリアンショップの近くにはショッピングモールがあって、時間はたっぷりあるからと広い建物を片っ端から見て回ろうかなんて話して乗り込むことにした。上から下を見て行く戦法で上の階にあった旅行会社のショップでパンフレットをあさったり、書店で話題の本コーナーを見ながら現役文学部のおすすめなんかを聞いたりして。なんかこれめちゃくちゃデートっぽくない!?なんて1人で興奮していたら、旭ちゃんの足にしがみ付いた小さな子供がママーと声をあげたのだった。あっ、これ交番勤務時代に良く聞いてた声だ。そう意識を遠くに飛ばし掛けていると、どうしたの?ママじゃないよ?と優しい声を出してしゃがむ姿がただの天使にしか見えない。ンン〜〜〜〜!?凄い優しい声!?俺だってまだそんな声で話しかけてもらったことないのに!?凄まじいほどの羨ましさと、子供に語りかけるだけの光景があまりにも尊く見えて顔を両手で覆っていると、萩原さん!迷子みたいです!と服の裾を引っ張られた。はあ〜〜心臓苦しい〜〜〜〜〜〜〜。顔面大変なんだけど、松田ってなんであんなにポーカーフェイス保ってられるの!?なんかとっておきの秘訣とかあったりする!?慣れ!?人間の適応力強すぎ問題!?萩原さん?大丈夫ですか?と、足元から聞こえる声が心配するものになってきたから、慌てて大丈夫!聞いてます!!迷子ね!!と勢いで返した。なんだかボケっと俺たちを見ていた迷子らしい男の子は、突然火が付いたように泣き出すからもう大慌て。旭ちゃんと一緒にあやしたりしつつ、とりあえず一番下の階にあるサービスカウンターを目指すことになるわけで。普通ならサービスカウンターに届けた時点でお役御免となるはずなのに、男の子がやたらと旭ちゃんから離れたがらなくて。仕方ないからと、そのままお母さんが来るまで付き添うことになったり。待機しながら何度も迷子のお知らせを流してもらうけど、親御さんは一向に現れず。これは流石にデートどころじゃないなあ、と苦笑し始めて随分経った頃にようやく本物のお母さんが登場した。ひたすら探していたと言う男の子のお母さんは、必死すぎて迷子アナウンスが聞こえていなかったらしい。ダメ元でサービスカウンターに足を運んだと言う。そういうこともありますよね、と眉を下げながらも良かったですとにっこり笑った旭ちゃんの腕からお母さんの腕へ男の子が渡され、ようやくミッションコンプリート。親子の再会には随分と時間が掛かってしまったけど、まあ、とにかく本当に良かった。下心など微塵もない清らかな警察官の俺が安堵の息を吐く。

「懐かしいなあ、交番勤務時代を思い出したよ」
「ふふ、萩原さんの交番勤務してた頃も見てみたいです」
「ん?もしかして松田のは見たことあるの?」
「はい、陣平くんはたまたま実家の近くに配属されていたんですよ」
「へえ、そうだったんだ」
「変な人に追い掛けられているところを何回も助けてもらいました」
「え、それ不審者!?しかも何回も!?」
「え?はい、そうです」

何か変なこと言いました?と首を傾げられても情報過多すぎて処理出来ない!!
え?百歩譲って不審者に追われるのはまあ、あるかもしれないけど!?何回も!?何回もある??ないよね!?どういうこと!?混乱する俺を置き去りにしたまま、旭ちゃんは何てことはないとでも言うようにからりと笑う。可愛い…可愛いのに。

「ふふ、陣平くんすっごく怒ってたなあ」
「そりゃあね!?」

思わずがしりと掴んだ旭ちゃんの肩は相変わらず細い。大きな瞳をほんの少し見開いた旭ちゃんはこてりと首を傾げるばかりだ。松田〜〜!!ちゃんと旭ちゃんに危機感覚えさせないとダメだよ!?もう〜頭痛いしなんだろう、泣けてきた!!

「俺、もっと頑張って働くね」
「はい…?無理しない程度で、お願いしますね」
「うん、旭ちゃんが居てくれたら大丈夫」
「ふふふ、ちゃんと居ますよ」