萩原研二
「萩原〜〜聞いたぞ〜〜?」
突然後ろから伸びて来た太い腕が首に掛かりぐえ、と情けない声が出る。
「やめろよ伊達〜〜昼飯中〜〜」
「わはは!悪いな!」
「全然謝ってるように聞こえないんですけどー??」
「まあ許せ。ん?松田は弁当か?」
「ああ」
「おおー旨そうだな!何だ、彼女か?」
「まあ、そんな感じ」
「こら松田〜〜!彼女じゃないだろ!」
「うるせーな。似たようなもんだろ」
「くう〜〜!コイツ!ほんと!」
「それより、萩原の何を聞いたって?」
「ん、そうだったな。美少女とデートしてたのを見たって同僚から聞いてな」
「え!?嘘!?見られてた!?」
「ほおー?どんな美少女だったんだ?」
「んー何だったかな、ゆるふわ髪?の大学生っぽい美少女って言ってたな」
「だ、伊達!それ以上言わないで!!」
「いいじゃねーか。伊達、どんなデートしてたって?聞かせろよ」
「珍しいな、松田がこういう話に乗ってくるの」
「伊達〜〜〜!!」
「そうだなあ、旅行のパンフレットあさったり、書店で本見てた?とか」
「やめて〜〜〜〜〜〜!俺の命が未だかつてないほどの危機だから!!」
「へえー?おい萩原、もっと詳しく教えてくれるよな?」
「たまたま!偶然!会ったの!待ち合わせとかしてないから!!」
ひえ〜誰か見てたとか!誰だよ!やめてよ!松田の顔めちゃくちゃ怖いんですけど!さっきまで気味悪いほど機嫌良さそうに従兄弟のお手製弁当食べてたじゃん〜??羨ましい!爆発しろ!とか爆処もびっくりな不謹慎ネタを炸裂させたことは心の中でちゃんと謝るからさあ〜〜。食堂のテーブルで松田と向かい合うように座っていた俺の隣に、伊達が腰掛ける。手元のお盆には、本日のBランチ定食である大きな唐揚げが売りのコスパ最強皿。豪快に食べ出しながら、そういえばと声を出して。
「俺もこの前、とんでもない美少女に会ったぞ」
「へ、へえ?どんな子?」
わーい新しい話題だ!伊達ナイス〜!と勢い良く食いつけば松田が舌打ちをした。
「引ったくりを現行犯で取り押さえてくれたんだが、物凄く足が速くてなあ」
「へえ〜、伊達も結構足速いのにね?」
「すらっとした細っこい子でなあ、全然追いつけなかった」
「……伊達、そいつの見た目覚えてるか?」
「ん?ああ、そういえばその子もゆるふわ?の髪で大きな目の子だったなあ」
「え?その取っ捕まえた日っていつなの?」
「うーん、ああ、萩原が美少女とデートしてたとかいう日と同じじゃないか?」
あちゃーと思わず額に指先を当てる俺の前で、松田はそっと箸を置いてから端末をいじりだす。2人ともどうした?と首を傾げる伊達はリス状態でもぐもぐしていた。うんうん、可愛い可愛い。今事実確認中だからそのままもぐもぐしててね。
「……あいつ」
「あ、やっぱりそうなの?」
「伊達に会ってるだと」
「おお〜〜順調に同期との邂逅を果たしているねえ」
「ん?何だ?知り合いだったのか?」
「伊達〜〜、その美少女をまた街で見かけたら周りに警戒してあげてね〜」
「真っ先に俺に連絡しろ」
「おお……松田の彼女か?」
「そうだ」
「お前さあ、しれっと嘘つくのやめよう!?」
「うるせえ」
「わはは!お前らほんと仲良いなあ」