男の娘な従兄弟と新年を迎えた松田陣平の話

「それでは!みんなで大乱闘を始めます‼」

そんな旭ちゃんの声を皮切りに、始まったのは大乱闘ゲーム大会もとい同期全員揃って今年も一年お疲れ様でした忘年会。松田家に集まった俺たちは、真剣な顔でちっさなコントローラーを握り液晶テレビを見つめている。今日はどうにかこうにか仕事を終わらせて来たという降谷と諸伏もちゃんと居る。伊達は奥さんが出産間近で里帰り中だからと、俺と一緒に顔を出した。文字通り同期全員が集合出来る機会はそう多くないけれど、今年最後の締め括りだからと全員の気合の入りようはいつにも増してと言ったところだろうか。人数が微妙なので、大乱闘なゲームはチーム戦でやることになった。松田は当然だろという顔で旭ちゃんとチームを組む気満々だったけど、松田家はゲームをやり込み過ぎているので降谷がその案を却下。厳正なるあみだくじの結果、松田と伊達、降谷と諸伏、旭ちゃんと俺のチームに。降谷と諸伏はいつも通り過ぎて厳正なのか?という意見は飲み込んでください‼お願いします‼第一回戦は伊達、降谷、俺がコントローラーを握る。背後のキッチンから萩原さん頑張れ〜!なんていう旭ちゃんの声が聞こえてきて。ああ〜これだけで泣ける。ありがとう旭ちゃん‼今年も萩原さんは君の可愛さを糧に生きていくことが出来ました‼ご飯の準備は松田家と諸伏があれこれと動いてくれている。諸伏が松田家居候をしていたのは、もう随分と前だけど。勝手知ったる家という感じで旭ちゃんの手伝いをしている諸伏さんさすがです。

「旭ちゃん、これ持ってくよー。」
「はい!お願いします!」
「はいよー。」
「陣平くーん、諸伏さんだけにお手伝いしてもらっちゃダメだよお。」
「んー、旭のこと構ってるから忙しい。」
「ええー、だめだもんー!」
「だめじゃねぇ。」
「こらー、ふふふ、くすぐったい。」

え?ちょっと待って⁇ねえ⁇松田家めっちゃイチャイチャしてない⁇ねえ⁇集中出来ないんだけど‼旭ちゃんすごい可愛い声出してるよね⁇ねえ⁇見たいんだけど‼今年最後の松田家だよ⁇ねえ⁇

「ああー!萩原さん!降谷さんの技食らっちゃだめですよ!」
「えっ⁉何⁉」
「もらったぞ萩原ァ‼」
「えー⁉ああああああ⁉」
「うわ、なんだ降谷のそれ⁉」
「おーやるなーゼロ。」
「さっすが伊達、ちゃんと回避してるな。」

降谷はなんか良く分からないけど必殺技?的なものを出して来て、俺は無事に観戦タイムへ突入した。

「旭ちゃんごめんねえ。」
「いえいえ、大丈夫ですよー!」

俺が陣平くんも諸伏さんも倒します!なんてにこりと笑う旭ちゃんは、ダイニングテーブルの椅子に座る松田の膝の上。

「へえ?俺のこと倒せんのか?」
「倒せるもん!」
「ふーん、可愛い。」
「ええー、陣平くん何でも可愛いって言うんだから。」
「可愛いんだから仕方ねーだろ。」
「んんー、ずるい、格好良い。」
「旭だって格好良いばっかだろ。」
「だってー、格好良いんだもん。」

松田と頬を擦り寄せながら笑う旭ちゃんは本当に可愛い。しかも、今日は気分だったみたいで女の子の格好をしているから、ほんと眼福です。ここ最近の旭ちゃんは何ていうか、こう、色っぽさが出て来たっていうか、その。とにかくめちゃくちゃタイプなんだよなあ〜〜〜〜〜⁉出会った当初は美少女感がひたすらに強かったけど、大人になってまた別な魅力が出て来てる。これで男の子なんだもんなあ〜〜〜ありがとう世界。こんな奇跡みたいな子を生み出してくれて。ありがとう旭ちゃんのご両親。ありがとう松田家。ほんと。

「諸伏さん、お鍋代わりますね。お願いしたままですみません。」
「ん?いやー良いよ良いよ。そのままでね。」
「ええ?でもー。」
「諸伏が良いって言うから良いだろ。」
「うーん?」

卓上IHヒーターの上の鍋を見ている諸伏の顔は緩んでいる。そうだよな〜分かるわ。そんな顔になっちゃうわ。諸伏とは月一ペースで松田家尊いの会を開催し続けてるから、あの緩んだ顔の意味が良く分かるんだよなあ。お鍋の番を代わろうと伸ばした旭ちゃんの小さな手は、松田の手がすっぽりと包んでしまう。そのまま唇を尖らせて、ぽすりと松田の体に背を預けていた。その様子をありがたく拝んでいると。

「松田ー!お前!本当にいい加減にしろ!」

ああ〜〜降谷が爆発した。毎度毎度、最早何もかもを受け入れているメンバーばかりなのに、降谷だけは絶対に譲らない。旭ちゃんを心配してるのはわかってるけど、口うるさい旭ちゃんママモードになると面倒臭いんだよなあ〜。しかも頑なに別に心配なんてしてないもん‼を装ってるからツンデレかよ〜〜と同期一同大変微笑ましく思っています。

「お、伊達良いぞ、そこだ。」
「おー、良く分からんがもらったぞ降谷。」
「……は⁉伊達ー‼」
「わはは!悪いな!」
「あーゼロ負けちゃったかー。」
「でも降谷さんも惜しかったですねえ。」

ふと、思うのは。また今年も誰一人欠けることなく一年を過ごせたことに感謝しなきゃ、なんてこと。まあ、全ては俺たちを助けてくれた旭ちゃん様々ってところなんだけど。俺たちは俺たちで、相変わらず万年不幸体質な旭ちゃんを気に掛けながらお仕事をしていく。

また、来年もこんな風に。その先もずっと、ずっと。