最近のわたしとルパンの流行り。それは「たまご予報」だ。簡単に言うと、我が一味の終身名誉家事担当・次元の機嫌を朝食に必ず出てくるたまご料理で見定めようという試みのこと。統計上では、手間をかけた料理がでてくるほど、次元の機嫌は良いということになっている。1日の振る舞いを決める大事な基準だ。


寝ぼけ眼を擦りながらわたしが洗面所に行くと、そこには既に先客がいた。間抜けな顔で髭を剃るルパンにおはようを言って、わたしたちは鏡越しに会話をする。

「今日たまご何かなぁ」
「そーねぇ。そうだマコ、せっかくだから賭けようぜ」
「乗った!わーい、今日のおやつはルパンのオゴリだな〜」
「相変わらず気が早ェなあ」

ルパンの顎や口周りがすっかりきれいになった後、場所を交代して今度はわたしが顔を洗っているとキッチンの方から次元がわたしたちを呼ぶ声がした。はあい、と言う返事が重なる。

「寝癖ついてますよお嬢さん」
「ん?」

水を止めてタオルで顔を拭いているとルパンがからかうように笑いながら、けれど手つきは優しくわたしの髪に触る。ルパンのこういう甘やかし方が、わたしは結構好きだ。 

「じゃあわたしはオムレツに賭ける。ルパンは?」
「よ〜し、俺はベーコンエッグだ」

そして、朝のこの時間帯はもっと好きだ。夜に一度冷やされて、少し清潔になった空気と柔らかい日差しが窓から流れ込んでくる。それに乗った食欲をダイレクトに刺激するご飯の匂い。

「おはよ〜次元〜」
「おう、もう出来てるぞ」

この世界一のガンマンは、愛銃のマグナムだけじゃなくてフライパンの扱いにも長けている。早撃ちとおんなじで、何しろ手際が良いのだ。

その後の「いただきます」は、わたしのは元気よく、ルパンのはちょっと残念そうにリビングに響いた。本日のメニューはふわふわのプレーンオムレツ・トースト・オレンジにコーヒー。ついでに次元の機嫌は本日も良さそうだ。

「次元聞いて!今日はルパンのオゴリでおやつが食べれるよ〜」
「そりゃ良かったな。財布空っぽになるまでジェラートでも重ねてもらえ」
「あ、それ名案〜!」
「次元おまえ、ばかやろう!」

「で、一体何を賭けたんだ?」

ないしょ、と声を揃えて答えるわたしたちを次元だけが不思議そうな顔で見ている。そんなとっても爽やかな朝の話。

-meteo-