「・・・平子サンは、呼んでないんですけどねェ」
「なんや喜助俺がおったらなんか都合悪いんですかァ?詳しく聞かしてや」
「いやァ・・そんなことないっスよォ」

何のために「行事は何であれ酒を飲む」という暴論をかます夜一から逃げ回ってなまえと七夕を過ごそうとしたのだと思っている、と喜助がため息を吐くのと同時に真子も同じように息を吐き出す。こちらはこちらで勝手な思い込みをして、なまえと一緒に星でも見るもんだろうと思っていたのをなまえがいきなり「今日は喜助さんに誘われてるから」と当日言い始めるから焦るどころの騒ぎではなかった。「真子ってイベント好きだったっけ」と首をかしげるなまえをなんとか言いくるめて、喜助となまえが二人きりになるのだけは阻止できたので、真子としては安堵のため息である。

「なあに、どっちもため息ついて!やだねぇオジサン達は」
「うっさいわ、織姫と彦星に思いを馳せてたっちゅーねん」

ごそごそ、と冷蔵庫を漁るなまえには真子の声は届いていないらしかった。ここぞとばかりに喜助は真子を抉りにかかる。

「アラ、意外とセンチメンタルなんスね・・・ちょっと気持ち悪いっス」
「七夕なんかいっこも興味ないくせに口実にしてなんやしよーとしてる奴のほうが気色悪いわァ」
「・・・言ってくれますねェ」
「コッチの台詞や」
「というかついでだから言いますけどォ、平子サン、いくら幼馴染って言ったって過保護すぎるんじゃありません?」
「・・・何が言いたいねん」
「いや、フツーに邪魔っていうかァ、」
「何やとコラ」

「何こそこそしてるの?はい、ゼリー食べよう?」

手には三人分の星型のゼリー。黄色ピンク黄緑、三つの層に分かれている。どうやら七夕を模したものらしい。

「浮竹たいちょーがくれたの、七夕にちょうどいいのがあるって」
「へェ。涼しげでキレイっスねぇ」
「でしょう?」
「お前菓子ばっか貰ってへん?太るで」
「真子は細くていいよねえ、はいスプーン」
「・・・おん」

十二番隊舎の廊下で足をぶらぶらと投げ出して、三人並んでゼリーを食べる。上を見上げれば綺麗に天の川が輝いていた。どうやら今年は織姫と彦星は会えたみたい、となまえは頬を緩ませる。

「短冊は書けなかったけど、いいよねえこんな七夕も」
「そっスねぇ、まあ思ってたのはちょっと違いますけど」
「まだ言うんか、根にもつなァ」
「・・・なあに?」
「いやいや、予報では雨だったデショ?だから良かったなって」
「ああ、そゆことかあ」
「・・・・」
「・・・なんですか平子サン?」
「別にィ。なーんも」

頭上で二人が顔を突き合わせていがみあってることも知らず暢気になまえはゼリーを平らげる。

「でも真子も来てくれてよかった、丁度よかったもの」
「どうゆうこっちゃ」
「このゼリー、黄色と、ピンクと、黄緑が入ってるでしょ?」
「レモン、ピーチ、マスカットですかねェ、おいしいっス」
「黄色が真子で、黄緑が喜助さんで、だからピンクはわたしかなあって思ったの。なんか、嬉しくって」

(2014.07.07)

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