たまにはあのじめっとした夏が恋しくなるだろ?というルパンの一言で、今年の夏は日本で過ごすことになった。降りたった瞬間のむわぁっとした空気に4人で変なテンションになりながら車を走らせて数時間。片田舎といった言葉がしっくりくるこの土地にあるアジトは大きな一軒家で、来たこともないのになぜか懐かしく感じた。これぞ日本の家屋、といったその風貌に、口ではもっと都会の近くがよかったとぼやく次元も、もちろん五右ェ門も満足そうな顔をしていた時は笑ってしまった。どんな国もいいところがあって、それを私たちは存分に楽しむけれど、結局日本がいちばんだと思うのは皆同じらしい。

けれど、この寝苦しさはやっぱり苦手だ。

「あ、暑い・・・」

時計を見るとまだ7時半で、朝方ようやく涼しくなったころに眠りについた身としてはまだ眠りたい気持ちでいっぱいだったけれど、この茹だるような暑さじゃ心地いい二度寝は期待できないだろう。階下ではなにやら音が聞こえるし、誰かしら起きてるなら朝ごはんを作ってもらおうと決め、若干急な階段を慎重に降りる。

「あ、みんなおきてるーおはよー」
「なまえ、珍しく早いじゃない」
「ルパンこそ。あ、次元わたしの分も朝ごはん!」
「おかず目玉焼きしか出来ねぇぞ」
「十分です!五右ェ門もおはよう!」
「ああ、朝から元気だな」

頭を撫でられたけれどどう見ても朝の修行終わりみたいな五右ェ門さんの方が元気です。次元はキッチンに姿を消し、わたしとルパンは食卓に頬杖をつき見慣れないニュース番組を眺める。

「ん?なにこれ何チャンネルのやつ?」
「さっき見たんだけどよ、4らしいぜー?」
「えっ!?ズームインは!?」
「終わったみたいね〜」
「まじか」
「ショックだよな〜俺あの女子アナ好きだったのに」
「あのひと結婚したらしいよ」
「まじか」

「おい、出来たぞ〜取りにこい」

お母さん、もとい次元が呼ぶ声が聞こえたので会話を切り上げて3人でキッチンへ向かう。出来立ての、ご飯とお味噌汁のこの食欲のそそられる感はなんなんだろう。五右ェ門なんか日本についてはじめての食事のときほぼ泣いてた。でもなんとなく分かる。手を合わせていただきますを3人でして、ふと気づく。

「なんでルパンソース持ってんの」
「なまえこそなんで醤油」
「いやいやまてまて、目玉焼きには醤油でしょ」
「そいつは素人のやることでしょ〜」
「うっわ!えっ次元は醤油派だよね!?」
「あぁ?塩胡椒だろ。っつーか何でもいいだろ早く食え」
「絶対醤油が多数派なのに・・・!この屈辱・・・あ、五右ェ門は!?日本人は醤油だよね!!」


「なにを言ってるのだなまえ、ポン酢に決まってるだろう」

「「「まじか」」」


(2011.07.19)

-meteo-