いつも通り、と言えばいつも通り。首尾よくお宝をゲットして派手に逃げる。今日のターゲットは美術館だ。赤外線センサーなんてものじゃあこのご時世安心なんてできないぜ、と少し同情しつついつものように相棒の赤いジャケットがひらりと揺れて、警察がどよめく。全部あいつの思うとおりだ。いつも無駄なまでに動くもんだ、と若干呆れつつ俺は首を振る、と同時に視界に入る光に、一瞬目を奪われた。
「次元ちゃーん、乗ーらないのー?」
「ちょっと待てルパン!」
*
追跡も途絶えて一段落、夜の街を車で駆け抜けている。仕事後の煙草ほどうまいものはない。手元から流れる煙をなんとなしに眺めていると、ルパンがにやにやとした顔を向けてきた。
「何だってんだ気持ち悪ィ」
「隠さなくったっていいじゃない!で、その左手で輝いてるのは?もしかして?」
「次元おぬし、そのようなものに興味あったのか?」
後部座席を振り向くと五右ェ門も興味津々といった顔をしていた。なんだよ、どいつもこいつも。仕方なく二人に言われて握っていた左手を開くと掌で輝くピンキーリング。そうだ、とっさに掴んだのだった。らしくないことしたものだとため息をつく。
*
「……なまえ」
「あ、おかえり次元!」
アジトにつくなり手招きをすると、食い入るように見ていたテレビを放り出して素直に駆け寄ってくるなまえを微笑ましく思った。頭を乱暴に撫で回してやるとなまえは髪ぐちゃぐちゃ、と子どもがするように頬を膨らませて俺に抗議した。悪かったよ、と手櫛で梳いてやると機嫌はすぐに戻る。本当に分かりやすい奴。
「で、なに?」
「ほら、土産だ」
彼女の掌に、輝くそれを乗せてやると、なまえは目を何回かしばたかせた後、これでもかというほど頬を緩ませて笑った。ありがとう!と言って自分の小指にはめたそれをうっとりと眺める。悪くない、悪くないなこんなのもだなんてほんとうに柄ではないけれど。
ベイビーフィンガーに束縛
「次元ちゃん知ってる?」
「あ?」
「ピンキーリングって束縛心のあらわれらしーぜぇー?」
「………」
(2011.06.07)
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