全蔵くんがもう酒が無ェな、と空き缶を振ったのとわたしがCMで流れたアイスが食べたい!と口にしたのはちょうどおなじタイミングだった。既に坂田さんは夢の世界に片足突っ込んでいたので置いていくことするとして、そういうわけでコンビニへ行くという結論が導き出されるのにそう時間はかからなかった。

「オイ待て、その恰好で行く気かよ」
「ぜんぞーくん遅い!はやく行こう売り切れちゃうかも!」
「んなわけねーだろ、つーか外寒ィ?」
「えー、わかんない!!」
「玄関いるんだから開けろよ」

CMを見てから口がもうすっかりアイスの口になってしまったわたしは玄関で子どもみたいに足踏みながら全蔵くんを急かす。全蔵くんもわたしも酔っぱらっているので少しづつテンションは高めだ。ナルト走りやって!と未だリビングにいる全蔵くんに呼びかけると嫌がるポーズを少し取ったあと、シュッと口でばかみたいな効果音を叫びながらいわゆる忍者走りでこちらにやってきてくれる。さすが忍者だけあって、普通のひとと比べるとだいぶ速いのがポイントだ。そのアンバランスさにわたしは声をあげて笑う。何度見たってばかばかしくておもしろい。

「お前ぐらいだよこんなんやって喜ぶの」
「えー、おもしろいのにな〜坂田さんにも見せてあげようよ」
「ゼッテーやだ」

酔っぱらっているせいで赤い頬と、あまりにも薄着だったので憐れまれて巻かれたマフラーのおかげで首だけは暖かい。澄んだ冷たい空気のおかげで頭はさえてゆくのを感じるのに、吐く息が視界を白くぼやけさせる。なんとなしに見上げた夜空には雲ひとつない。まばらにかがやく星がのりたまみたいだ、と思いながらちらり、と全蔵くんのほうを覗き見る。

「・・・なんか空見てたらごましおが食いたくなってきた」
「ええ〜、ごまの割合多すぎじゃない?ここはのりたまにしようよ」
「つーか腹減ったわ。米食いたくなってきた」

このぶんじゃ買うのはアイスじゃなくてふりかけになるかもしれないな、なんて思う。コンビニはまだ遠い。


-meteo-