手を合わせて見つめるだけで、愛しあえる話しもできる
耳に馴染んだ懐かしいメロディがテレビから聞こえてきて思わず続きを口ずさんだ。
「くっちづーけするよりあーまく、」
「・・・帰ったぞ」
「あ、おかえりピッコロさん」
帰ってくるなり上着やカバンを放り投げてソファーに沈んでるわたしを、今日のピッコロさんはどうしてか叱ったりしなかった。ピッ、と指を向けると瞬く間に上着はハンガーにピシッと掛けられて、カバンもいつものところへ飛んでゆく。それからわたしの頭を慎重にひと撫でして隣に腰を下ろした。
それにしても今日はつかれた。肩が張っている、背中がなんとなく痛い。思いっきり伸びをするとポキポキ、という軽い音がした。ふぅ〜〜とため息をついてもういちどソファーに埋まってクッションを抱えれば心地よい眠気が訪れる。
「もう眠いんだろ、連れてってやる」
「ね、ねむ、くない・・・ほんと、ぜんぜん」
ほんとはすごくねむい。けどなんかすぐさま言い当てられて悔しいので。
「なんでそこで悔しがるんだ、変な奴だな」
ピッコロさんはあのうたみたいに手を合わせて気持ちを読み取るなんてケチなことは言わない。勝手に心を読み取っちゃうし、耳もすこぶるいいし、テレパシーだって使う。「口づけするより甘く」ではないいけれど、その厳しさが優しさだというのは知っているから大丈夫。
わたしを抱える(米俵みたいにするのはちょっと考えてほしい)ピッコロさんに、にへら、と笑いかけるとちょっと変な顔をした。その間も頭の中ではあのうたが鳴り響く。銀色に身を包んだ、きらびやかな二人が正面を指差した。もしかしたら、もしかしたら。
「まあ、わたしも地球の男に飽きたところだし」
呟いて満足して、ピッコロさんのマントをやわく掴んで意識を手放した。次の朝、えらく思い詰めた顔のピッコロさんにどういう意味だと問い詰められるのはまた別の話だ。
完全にタイトルありきなはなし
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