眠れないなまえに付き合って(というより心配で)居間でホットミルクを飲みながらぽつぽつと会話すること数十分。飲み終わったマグカップをふたつ台所に置きに行って戻ってきてみれば、崩れ落ちるような体制でなまえはようやく眠っていた。それを見て俺は少しだけ安心する。寝顔を見ながら、くすぐったそうにピクピクする頬から前髪を払ってやると幾分穏やかな表情になった。こうして見ると起きている時より幼く感じる。

自分を知る人が誰もいない、自分が知っている、愛する人が誰もいない世界に唐突に放り込まれる恐怖。突然現れてもう1週間は経つが、強いなまえはまだあの一粒しか涙を見せていない。

「ーーー・・・シ、」

仕方無しに抱き上げた体を布団に下ろそうとしたときだった。首筋に、吐息と一緒に吐き出された小さな声が当たる。思わず動きを止めた。泣きそうな声色だった。

「・・・なまえ?」
「・・・カカシ?ーーよかった、」

強い力で首に腕を回されて、一緒に布団に倒れ込んだ。慌てて解こうとしたものの、もう既に夢の世界に帰っていってしまったらしい。穏やかな寝息が聞こえてくる。
せっかく寝付いたのに起こすのは可哀想だからと誰に言うでも無いのに言い訳を考えながら低く長く息を吐いた。できるだけ静かに。

知っていた。ここんとこなまえが苦しそうな寝言を言っていたことも、その唇がカカシとかたちづくっていたことも。まさか自分と間違えられるとは思わなかったけれど。

「・・・言わずにいた方がいいんだろうな」

立ち読みした今週のジャンプを思い出す。仲間を、里を守るために瀕死で神威を使ったカカシがそこには描かれていた。自分の世界を描いた物語が、現在進行形で連載されていることをなまえにはまだ知らせていない。

自由に動く右手で、少し迷ってから柔らかい黒い髪を撫でた。けれど、この安らかな寝顔はきっと俺じゃない銀髪と赤い瞳に守られている。キュッと縮んでからジリリ、と胸が焦げるような感覚がした。

-meteo-