「・・・暇だねぇ」
「な〜。穏やかな日々ってのもいいっけどよ、ちょーっと飽きてきたよなぁ」
「・・・・・」

わたしは出たばかりのゲームを早々にクリアしてしまったところで、ルパンは懲りずに美女に振られて傷心帰宅したところ。次元はソファで寝っ転がって煙の輪っか製造機。
 
はぁ〜とため息が重なって、アジト全体が無気力に包まれる。

一言で言えばつまらない。わたしたちは全員揃いも揃って退屈が大の苦手なのだ。

わたしたちの生活は、基本的に@派手な大仕事A大宴会のち、分け前でそれぞれ衝動買い祭(不二子ちゃんとかなんだとかでパーになるときもある)B暇と貧乏に耐えかねて情報集め・下調べ、というサイクル(そして@に戻るのだ)で出来ている。今はAとBの間ってところだろうか。お金はまあまああるし、大仕事ほどではないが手軽な仕事も無いことはない。ある意味いちばん持て余すとき。

「俺も五右ェ門みたいに修行でもすっかねぇ」
「あー、それもありー」
「やめてくれ。お前らまで五右ェ門みてぇになったら俺ァ突っ込みが追いつかなくて死んじまう」

――でもそういえば、五右ェ門って修行修行って結局何してんだろうね。

それはとっても、素朴な疑問だった。

「・・・・・」

少しの沈黙のあと。見合わせたふたりの顔とふたりの瞳に映る自分はどれもおんなじ、おもちゃを見つけた子どもみたいな顔のスリーカードだった。

...

「にしても俺たちも趣味悪いよな〜」
「まぁ、趣味よかったら泥棒稼業なんてやってないよねぇ」
「違いねェな」
 
人里離れた山なんじゃないの、いやいや荒波厳しい海だろ。そんなわたしたちのヤマカンは、なんとも微妙な結果に終わった。通るっちゃ通るし、かといってドンピシャとは言えないし。

「・・・オリエント急行って、五右ェ門案外洒落てんだね〜」
「そーいや五右ェ門ちゃんってば、前日本にいるとき世界の車窓から食い入るように見てたっけね」
「なんにせよ、自分を追い込んでるようには見えねぇよな」
「あ!来たよ五右ェ門」

ただ五右ェ門に会って聞くだけじゃあ面白くもなんともないしわたしたちが列車に潜り込んだときには丁度五右ェ門は食堂車に行っていたので、これ幸いと小躍りしながらわたしたちは小型カメラを部屋に取り付けることにした。クラシカルに窓か天井から覗こうとも考えたけれど、見たい人は3人もいるし何より五右ェ門は気配には敏感だ。そして反対に、機械製品には(不二子ちゃんに入れ知恵されなければ)至極疎い。

「さてさて、モニタリングと行きましょ〜・・・ってありゃまぁこりゃ」
「こんなこったろうと思ってたよ俺は」

「うっそ〜!?まさかのグラマー美女連れ!?」

前回の仕事終わり、みんなが浴びるようにお酒を飲んでいるときに今回も女に騙されたとかでひとりだけストイックに飲まず武士道とはうんぬん、そもそも女人と話すのがうんぬんと説いてきたのはなんだったのか。

「っていうか、顔真っ赤なんですけどこのおサムライさん」
「あれだけ邪念だ煩悩だなんだっつってっけどよ、実際のとこアイツがいっちばん邪念だらけなのよね」
「違ェねぇ。しかも運も悪い。ありゃその辺の女じゃねーぜ」
「そうねぇ〜、暗黒街ってとこかしら」
「あれ、ルパンほだされないね珍しく」
「そりゃあねなまえ、俺っちさっき振られたばっかりだから、って言わせんじゃないの」

どういう経緯で知り合ったかは分からないがしおらしいふりしてこの美女、なかなかどうして積極的だ。女人と話してはいけない、とかいう謎ルールで諦めてくれるようなひとじゃないらしい。あーあー、五右ェ門のはだけた胸に手を置いて、憂い顔もなかなか決まってる。

『では、せめてお名前だけでも・・・』
『い、石川五右ェ門と申す・・・』

「はっ、はやあ!即答じゃん!」

それまでクツクツと笑いを噛み殺しながら揺れて支えきれなくなった身体をお互い支え合いながらなんとか堪えていたのに、ついにそこで3人同時に吹き出してしまう。ゲラゲラと、品というものがおよそ欠落した笑い方。わたしたちの1番の健康法。

5分後、ようやく気付いた失恋(というより裏切り?)直後の五右ェ門に切り捨てられんばかりの勢いで詰め寄られるまで、わたしたちの腹筋は受難を迎え続けるのだった。

-meteo-