険しい顔をした大人たちばかりがいる部屋でひとり、真ん中に立たされる。ここにいるのは皆海軍本部の最高司令官達、つまりはおえらいさん、というやつらしい。この部屋に入る前、大丈夫だと青キジさんは微笑んでくれたけれどやっぱり不安なものは不安だ。
まあ、でも。リドル先生に大目玉食らった時のほうが、もっとずっと何倍も恐ろしい。思い出して比べてみて、肩の力が少し抜けた。先生ならなんて言うだろう。きっと、マグルの前でそんな無様な姿を見せるなと叱りつけるに違いない。想像に容易くて思わず笑ってしまうと、大人たちは顔を益々しかめた。でも、もう怖くない。27センチ、桜の木にフェアリーの羽。わたしの杖は今日もよく手に馴染んでいる。
「ホグワーツ魔法魔術学校・闇の魔法に対する防衛術の助教授のなまえです。お手柔らかに、どうぞ」
お辞儀をして、杖を構える。リドル先生はなぜかこのお辞儀に厳しかった。思い出して唇を震わせると、目の前の海兵さんは警戒の色をますます強める。
さぁて嫌というほどみっちりとあの魔王さまにしこまれた決闘術、見せてあげようじゃありませんか。
「Protego! 護れ!Impedimenta、妨害せよ」
誰も彼も、声を忘れてしまったかのようだった。驚きが言葉にならないのだ。確かにそうだろう。少し魔法を見せてもらった俺だってそうなのだから。
模擬戦のかたちをとってなまえちゃんの前に立たされたナントカくんっていう大佐じゃ全然歯が立たないのは一目瞭然だった。彼も一応六式の幾つかは習得してたはずだけど。
「あらら、ソレにしてもなんだか楽しそう」
魔女というよりは、悪戯好きな妖精かなんかみたいだ。舌を出して時折笑ったり焦ったりしながらみるみる間合いを詰めた、と思ったらふいに距離を取ったりと行動が読みづらいところも。それにしても、目の前で繰り出される魔法の数々には驚くしかない。例えば俺なら氷を操って試行錯誤(ってほどでもないけど)して戦うわけだけれど、彼女は水でも炎でもお構いなしに繰り出してしまう。
「そろそろっ、いーですかね?Expelliarmus、武器よ去れ!」
そう彼女が唱えると、大佐の手ににぎられていた重たそうな剣が吹き飛ばされなまえちゃんの足元に落ちる。ガシャン、というその音で模擬戦という名の魔法の検証は終わった。
「あー、つっかれた!ありがとうございました!」
戦っていた相手に駆け寄って、なまえちゃんは何をするのかと思ったら治療をしているらしかった。歌うように口ずさまれる耳慣れない言葉と気まぐれに揺れる杖。目で見て分かるほど、傷がみるみる癒えてゆく。
花が咲いたように笑うなまえちゃんと大佐が頭を掻きながら握手をしているのを、俺は離れたところから見ていた。胸の何処かがうずく。
ここに来る前、なまえちゃんが言っていたことを思い出す。そうだ彼女は言った。そりゃ、ありますよ。この世界にもあるでしょう。銃ってやつと一緒です。
癒やす魔法があるように、人を殺す魔法もある。ソレに気付かないほど上層部は馬鹿じゃない。例え彼女が望まなくても、きっといつかその日が来るだろう。そのときに、俺は。
「・・・そろそろ、覚悟決めなくちゃなんないかもね」
ーーーーーー
みたいな(?)
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