談話室では暖炉前の三人掛けソファを陣取るのがいつものことだった。我がスリザリン寮は湖の下にあるから一年中肌寒い。超がつくほど寒がりな彼女がうるさくなるのを避けてか、はたまた今年監督性になったルシウス先輩の権力のたまものなのか、とにかくスリザリンで暖炉前を使うものは僕たちのほかにはいなかった。暖炉前はたしかに快適だ。定位置がなぜか僕が真ん中で、その隣をふたりが囲むようになっていなければ。

「今日もほんとさむい、ほんと無理サラザールスリザリンまじセンスないね」
「まあ、湖の下っていうセンスはちょっと・・・って感じですよね。いや人魚とか見えたらいいですけど大イカしか見えないじゃないですか」
「あーそれわかるー」

セブもそう思うよね?先輩もそう思いますよね?と彼女とレギュラスに両側からステレオサウンドのように振られるが適当に躱して読書に忙しい、みたいなオーラを出しておく。ふたりが思ったよりもずっと、スリザリンであることに誇りを持っている生徒は多い。というかレギュラスはそれでいいのか。そして左右で会話のキャッチボールをされるとうるさい。

「てかさ、レギュラスまたそれ食べてんの?」
「えーおいしいじゃないですか」
「焼きマシュマロ・・・なんか媚びてるよね〜何?モテたいの?そういう枠狙ってんの?」
「結局いつも僕のを半分以上食べてる先輩に言われたくないですよ!・・・あっ、そうですよね〜先輩僕よりモテないですもんね〜女子力ないですもんね〜」
「きえーい!ちょっとセブルス!レギュラスが反抗期だよ〜かわいくない〜」
「僕にふるなバカ」
「てかセブルスまた変な本読んでる・・・・なに?芋虫の類のスケッチとか見て何が楽しいの・・・正直引く・・・」
「ちょっと先輩かわいそうですよ。言わないでおいてあげるのが優しさですよ」
「・・・おいお前ら、」

「ねぇわたし天才かも・・・ほらほら、こっちの芋虫にしなよ・・・!」

満面の笑みでマシュマロをBBQのごとく差した串を差し出されて、もうどうすればいいかわからなくなる。カラフルなマシュマロは確かに図鑑に乗っていたやつと少し似ているから困った。レギュラスは悲鳴をあげて気持ち悪くて食べれなくなったと彼女のみならず僕までなじった。こうなればやけである。今日も不毛であるとは分かっていても、狭いソファのうえでマシュマロの押し付け合いがはじまるのだった。

(2015.04.20再録)

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