下っ端、っていっても本部海兵ではあるので皆コワモテで屈強なんだけど、まぁとにかくその中でジャンケンをして見事負けてしまった。ジャンケンポンで1発目、綺麗に開かれたたくさんの手のひらの中で、ひとり間抜けにグーを出していた。あれは結構歴史的な負け方だった、と思い返しながらすごすごと毛布を抱えてはしごを登る。ジャンケンで決めたのは、今夜の見張り番なのだ。

「あら、いらっしゃい」
「は、へ?なんで、青キジ殿?!?」

まあいいじゃない、と流され、どうぞと隣に座るよう促される。大将やお偉い人たちがお休みになるために私たちが見張りをやっているはずなのに、これじゃ本末転倒じゃないか。けれどなんとなく、まぁいっかと思わせてしまうのはきっと青キジ殿の纏う雰囲気のおかげなんだろう。きっと赤犬殿や黄猿殿ではこうはいかないに違いない。せまくてごめんねぇ、とさほど悪いとも思ってなさそうな謝罪に肩の力がすぅっと抜けてゆく。

「ああ、あと、青キジ殿はちょっと照れるんだけど」
「・・・青キジ、さま?」
「それもそれでそそるけど、ちょっとねぇ」
「あ、青キジさんで」
「まぁ、いんじゃない」

見張り台というのは青キジ、さん(慣れない)のサイズでは出来ていないので言ったとおり少し狭い。つまり、なかなか密着する。不快感とかは一切なくて、毛布越しに感じる低めの体温(そういえば氷人間だと思い出した)が心地よかった。青キジさんと一緒だなぁと思う。目に見えて暖かくはないけれど、思ったより冷たくない。

「なぁに、もしかして眠いんでしょ」
「い、いや、そんなまさか、」

確か、青キジさんが海を凍らせて自転車で行った年中サクラという素敵な花が咲いている島の話をしている途中だったのだけどもうわたしの睡魔はすぐそこまで迫っていた。話がつまらないとかでは決してなくて、わたしと青キジさんの体温が分け合って同じになってとても心地よかったのだ。

「あらら。瞼が下がりたくてぴくぴくひてるじゃない」
「うう、ちょっと立て直すんで、待ってください・・・」

いくら青キジさんが緩いといってもこれは列記とした任務なのだ。忘れるところだった。慌てて青キジさんから顔を背け、毛布から手を伸ばす。顔を思い切りひっぱたけば、多分睡魔は去ってくれるはず。

と、思ったのだけれど。

「はーいストップ」
「へ、」

わたしの腕は、青キジさんの逞しい腕に絡め取られてしまっていた。じわり、直接熱が伝わる。

「まぁ、なんだその、寝てなさいよ。今日は朝から人より頑張ってたんだから」

ゆっくり頭上から降ってくる優しくて低い声に、素直なまぶたは反応してしまう。途端、揺れる波のように訪れる睡魔に飲み込まれしまった。体から力が抜けてゆく。

「おやすみ」

どうしてそんなこと、知っているのだろうなんて疑問はぼやけた脳みそには浮かんでこなかった。



(ねぇ、そこの君もう一枚毛布持ってきてくれる?)(ハッ今すぐ!って、こいつ青キジ殿がおられるのに寝てるんですか!?スイマセンすぐ叩き起こして、)(ああいや、いーのよ。でも、こんだけ無防備に寝られると逆に不安っつーか、なァ)

-meteo-