お父様、ご乱心


 えー……諸君、突然だがお知らせがある。うん、落ち着いて聞いてほしい。決して取り乱さないように。特に真也ファンの皆様。警備員と係員の指示に従って行動してください。はい、そこ!テープラインの中に入らない!
 いや、いきなり何だって話なんだが。マジで、意味がわからないと思うが『本気』と書いて『マジ』で聞いてくれ。
 えー……本日を持ちまして、イケメンでクールでツンデレで親バカな真也は終了致しました。代わりにですね、ベイビー真也を始めます。

「何ぶつぶつ言ってるんでちゅか。捻り潰しまちゅよ」

 はい!これがベイビー真也!ベイビー真也だよ皆さん!相変わらず身長高いしイケメンだしパーフェクトボディーだし首を絞める手は力強いし苦しいです!
 だけども!

「あんまり調子に乗るんじゃありまちぇんよ」
「帰ってきてくれ真也……っ!!」

 こんなの真也じゃねーよ!何で赤ちゃん言葉なの?ベイビー真也!世の中にはな、イケメンでも許されないことが存在していて、

「俺はここにいまちゅよ」
「ぎゃーっ!! 気持ち悪いよう!!」

 これはアウトの部類なんだよわかるか?!

「気持ち悪いとは失礼でちゅね、虫けらの分際で」
「後半! 後半いいよその調子! そのクールな喋り方のままで! もっと俺を罵倒してくれ! ヘイカモン!!」
「意味がわからないでちゅ」
「ちっがーう!!」

 お兄さんやんなっちゃう!すごくリアルな悪夢だわこれ!早く目が覚めないかしら!

「うるさいでちゅ」

 ハッ!わかったぞ!俺が普段から真也に迷惑かけたり、優ちゃん狙ったり優ちゃん可愛がったり真也バカにしたりしていたから、ついに精神に異常をきたしたのか……!
 気づいた途端、一気に涙と鼻水が溢れ出す。

「真也、ごめん……俺が悪かったよ……」
「何で泣いてるんでちゅか、ノミ虫が」

 ああ……罵倒とイケメンっぷりは絶好調なのに……その他は絶不調だよ、この人。
 俺には真也を治せない、ごめんよ優ちゃん……と心中で呟くと、奥の部屋から優ちゃんが現れる。そして、頭の端についたピンクのリボンを揺らし、首を傾げて言う。

「ぱぱ! ばつげーむ、おわりだよ!」
「もう5分経ったのか」

 やっと首から手が離され、真也の口調も元に戻った。唖然とする俺を見下し、真也は吐き捨てる。

「俺はお前みたいにおかしくなってねェ。正常だ」
「……いや、だってさっき、口調がベイビーで、」
「今日は優の誕生日だろうが。だから、優の言ったことは絶対に聞くって決まりだ」
「あっ!」
「で、優とのジャンケンに負けたから、罰ゲームをしてたんだよ」
「ぱぱね、ちょきでまけたんだよ!」

 今日、6月1日は優ちゃんの誕生日だ。
 つまり、1日王様ゲーム的なアレで、罰ゲームの内容が赤ちゃん言葉5分間ってだけで、ああなるほど。お兄さんやっと安心したよ。

「優、クソ樹久も来やがったことだし、ケーキ食うか」
「くそー!くうー!」
「いや、優ちゃん! クソは食べちゃいかんよ!!」

 真也が持ってきたのは、恐らく手作りだと思われる美味しそうなケーキ。

(イケメンな上に料理も上手いってか! ハンッ! う、羨ましくなんか、ないもん……グスッ)

「よし、」
「せーっの、」
「「お誕生日おめでとう」」
「ありがとう、ぱぱ! きっちゃん!」




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