かいじゅう


 あーもーホントに可愛いなこの子。連れて帰りたいくらい……ん?待てよ?今、真也の奴いねェじゃん。連れて帰れるんじゃね?
 いや待て。そんなことをしたら殺されるな確実に。うん、絶対に殺される。

「がおー!」

 なんなんだよホント可愛いなチクショー!!何だよこの可愛い生物は!真也あの野郎羨ましいなコノヤロー!殺されてもいいからホント連れて帰りてェ嫁にしてェェェ!!

「かいじゅうめ! この真ちゃんまんがたいじしてくれよう!!」

 怪獣?俺、怪獣?ちょ、なに?なんかさっきから優ちゃんが赤いマント付けたクマみてェな人形でものすごい殴ってくるんだけど。退治ってアレか?遠回しに帰れってか?何コレいじめ?イジメ、カッコワルイ!!
 いや別に痛くないけどさ。体は痛くないけどさ。心は痛いけどさ!
 まあ抱きしめたいくらい可愛いんだけどね!!……アレ?おかしいな、目から塩水が……。

「きっちゃん? ごめんね? いたかった?」
「ん? ああ、大丈夫だよー」

 泣きそうな顔で覗き込んできた優ちゃんの頭を撫でてやる。

「でも……」
「大丈夫だって。だからそんな顔するな? こんなところパパに見られたら、お兄さん殺されちゃうよ確実に」

 優ちゃんを泣かせたとあっちゃあ真也の野郎黙ってねェだろうな。地獄の果てまで追って来て抹殺されそうだ。……うん、アイツならやりかねない。だってありえねーくらい親バカだもん。
 俺が優ちゃんを嫁にもらいたいって言った時なんかお前おもむろに警棒取り出して笑顔で……いやまずそれどっから出したんだよって話なんだが、

「きっちゃんごめんね? ばんそーこーはる?」

 わかるわかる。絆創膏貼ってたらなんでも治りそうだよな。

「……あー、優ちゃんがチューしてくれたら痛くなくなるかも」
「ちゅー? わかった!」

 え?ウソ?マジでかマジでかおま、優ちゃんチューしてくれんの?うわ、近い近い近い。
ちゅ。優ちゃんの唇が頬に触れた。
 ヤバ……今なら死んでもいいわ。天にも昇る気持ちってのはこのことか。

「きっちゃん、いたいいたいとんでった?」
「ん、ありがとうな。お返しにお兄さんも優ちゃんにあつーい接吻を……」

 ガシリ、何者かによって頭を鷲掴みにされる。ギギギ、と音が鳴りそうな動きで恐る恐るそちらを見ると、黒いオーラを身にまとい、笑顔を浮かべるスーツ姿の真也がいた。目が笑ってねェ……!

「パパおかえりなさーいあらスーツ似合うわねー色男は羨ましいわーでもちょっとはだけすぎじゃない? 鎖骨見えてるわよ色っぽいわねーうふっ! じゃっ! 俺はこの辺で!」
「まあそう言わずにゆっくりして逝けや……」

 いけ、の字が違うわよパパン!
 掴まれた腕にじわじわと力が増し、爪が食い込む。マジ痛いってコレ!

「ぱぱおかえりなさい!」
「おう、ただいま。ほら、土産だ」
「ぷりきゅあだあ!!」

 プッ!今真也がアレを買ってる所を想像しちまった…似合わねェェェ!!ププッ!

「優、あっちの部屋で遊んで来い」
「うん! ぱぱありがとう!」
「よし! 俺も優ちゃんと一緒にプリキュアで遊んで来るわ!」

 アディオス!と言い走り出そうとすると、足を引っ掛けられ、見事に床とこんにちは。真也は気にする様子もなく、俺の背中を踏み、片腕を掴むと、ゆっくり捻りだした。

「樹久は俺と遊ぶんだよ……」
「いだだだだだ!! 折れる! マジで折れる! 待て待て真也話せばわかるからちょ、待っ、ぎゃあァァァァァ!!!!」




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