触れるな危険
「ゆーうーちゃーん……あっそびーましょー」
「……」
愛しの優ちゃんに無視をされた。あからさまに。いや、ほっぺ膨らませて怒ってるのはすごく可愛いんだけど、コレ、お兄さんの硝子のハートにひびが入ったよコレ。
「ゆーちゃーん……」
「……やっ! きっちゃんきらい!」
はい、アウト。今完全に硝子のハートが砕けたよ。お兄さんのハートは粉々さ!
「真也ー!! これ、おま、優ちゃんに、嫌いって……真也ー!!」
「よかったじゃねーか。おめでとう樹久君」
「酷い! それでも親友なの?! お兄さん傷ついちゃう!」
「黙れオッサン」
オッサンじゃねーよ。俺まだオッサンじゃねーよ。だってまだぴちぴちの20代だもの!あれ?つまりオッサンか。いや、オッサンじゃねーよ!
優ちゃんがなぜこんなにも怒っていて、将来の旦那である俺を嫌いなんて言ったか、は……、
「……思い出したら泣けてきた……慰めて真ちゃん……」
「誰が真ちゃんだひねり潰すぞ」
今は絞められている首よりも心が痛い。
◇◇◇
話は三十分前に遡る。
今日は自宅で仕事をするという真也に、仕事をしている間優ちゃんのお守りをするように、と頼まれ、スキップで駐車場に行き車をかなり飛ばして追いかけて来た警察を振り払い(※良い子は真似しちゃダメ!絶対!)やって来た。
相変わらず可愛い優ちゃんに抱きつかれ、天にも昇る気持ちになったまではよかった。問題はそこからだ。
俺は優ちゃんと一緒に部屋で遊んでいたわけだが、
「きっちゃん、これあけて?」
「よし、お兄さんに任せなさい!」
悩殺モノの可愛さで開けてくれと差し出してきたのは、先日真也が買ってきたプリキュ……ぶふっ、思い出したらまた笑えて……うん、まあその、所謂変身用の、なんかこう……携帯みたいな……プラスチックで、組み立て式の玩具。それが開かなかったらしい。まあ安物だしな。
意気揚々と開けようとした瞬間、だ。
「あっ」
「ああ!!」
勢いあまって壊してしまったわけだ。
組み立て式なため、また組み立てると元に戻ったんだが、『壊した』という事実に対して怒っているらしい。
それから三十分間、呼べば無視をされ、抱きかかえようとした手には噛みつかれ、頭を撫でようとした手は払いのけられ、俺の心は砕かれた。
ああ……優ちゃんの背中に『触れるな注意』のステッカーが見える。
「なあ真也……どうしたら許してくれると思う? やっぱりプリ……ぷっ、プリキュ……ぶふっ、ア、かな……? くくっ!」
「お前が死ねば満面の笑みで許してくれるだろうよ」
と言いながら満面の笑みで首を絞めるのはやめてくださいパピー!
「残念ながら俺、今はプリキュアのシールしか持ってないんだけど……」
「何で持ってんだよ」
「これで許してくれると思うか?」
「ザケンナーのシールじゃあ無理だろうな」
やっぱり雑魚敵のシールじゃ無理か。
「……優ちゃーん、謝るからさ、お兄さんと…」
「きっちゃんあっちいって!」
「……」
その後、優ちゃんにはプリキュアの変身セットを買わされ(まああの天使のような笑顔に免じて許してあげよう。うん。ホント可愛い)、真也にはなぜかパソコンを買わされた。
「……なあ真也、俺の財布に冬将軍が到来したんだけど……何でかな?」
「さあ? 不思議だなー?」
「……」
泣いていいかな?俺。
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